第526話 氷神造形(アイス・モデリング)
六三四が上田氷河と対峙したその頃、楠木村正、斉木正宗、デューク・クラークは六三四の指示通り、待機を続けていた。
そんな三人を囲うようにして、氷の巨人が十体が立ち尽くす。
「九十九の姿が消えると同時に出現するなんて、偶然とは思えないな」
楠木のその言葉に賛同しながら、隣に居る正宗は冷静に氷の巨人の特徴を告げていく。
「……その通りですね。五メートルを越えるこの氷の巨人の氷の強度は中々のものだと言えます」
「なんで、強度が分かる?」
「いきなり、現れた時に氷に覆われた地面にヒビを入れたので」
「……強度もあるんだろうが、重さによるものもあったんだろう」
「確かに、そうみたいですね。取り敢えず、倒さない事には始まれないですね」
「あぁ、倒すか!」
楠木は人工能力として扱える様になった冥府邪剣を手にとり、正宗は人工能力として扱える様になった名殺神剣を手に取ると、二人は鞘から剣を抜き、構える。
「……お互いに五体ずつやるぞ。デュークはそこから動くな」
「けど、守って貰うだけじゃー」
「それで構わん。お前は逃走するためだけにここに居るそれ以上の事は誰も望んでいない」
「……すまない。でしゃばる事は控えるよ」
「そうしろ。正宗、いつでも行けるな?」
楠木のその言葉に正宗は答える事なく、名殺神剣をいつでも振るえる様に構える。そんな正宗を見て、楠木も手にしていた冥府邪剣を構える。
二人お互いに見ることも無く、同時に剣を振るう。
その振るわれた一撃によって、五体ずつをを切り裂いた。
「凄いよ」
氷の巨人を十体切り捨てた二人を赤い鎧の胸付近の魔法石を通じて、認識したデュークは少し遅れたタイミングで二人を称える。
二人は氷の巨人を切っただけで、それ以上の事が出来ていない現状に満足出来ずにいた。
「来たな」
「はい。氷の巨人を造り、操るものが」
氷の巨人を操った水色の髪の少女の出現に二人は警戒を強める。
「……上田氷花。兄の上田氷河と共に氷殺事件を引き起こした犯罪者だ」
「知り合いなのですか?」
「奈良支部の犯罪者達を相手にしていてな。その時に知っただけだ」
「名前を知っていて、彼女の力を知らないって事は無いですよね?」
「あぁ、あいつの能力は氷神造形だ。産み出した氷を好きな形に変化させ、動かす事が出来る能力だ」
「問題はどれだけの数を同時に動かせるかですね」
「あぁ、簡単に切断は出来るが、上や下に行かれると面倒だ」
「貴方の台詞から氷は空に飛行できるものにも変化させることが?」
 




