第525話 仲間達
「はい。行きましょう」
「あぁ、攻撃方向は理解出来たな?」
「勿論です!」
攻撃方向の敵への攻撃を開始しようと二人が身を乗り出したその時
「待って」
六三四のその叫びによって、二人の体は硬直する。
「……お前らは、ここでデュークを守っていろ」
六三四のその突然の台詞に楠木の首を傾げる。
「何故?」
「俺とお前達以外が殺された」
「……三人を一瞬に?」
「あぁ、切断する氷以外にもあるのかも知れん」
「……俺達をここに待機させて、お前はどうする?」
「単独で敵を撃つ!」
「大丈夫なのか?」
「心配するな」
「していない。ここは俺に任せておけ」
「あぁ、頼む」
その場を楠木の託した六三四は自身が切断した建物の元へと足早に駆け寄る。
切断した建物の間を歩いていくと、一人の男が待つようにして、立っていた。
「……手に触れただけで、離れた建物を切断するとは、お見事!」
「それを言う為にここに?」
「あぁ、どうしても、言いたくてね」
「ヌケヌケと言えたもんだな。お前も切断系統を扱うだろう?」
「お互いに手の内は理解出来ているみたいだな」
「当たり前だ。上田氷河」
「……俺の名前を知っているのか?」
「犯罪者を相手どる奈良支部の防衛局に深く関わる九十九家の人間としてな」
「奈良支部では人を殺した事は無かったと、思うが」
「そうだろうな。死者が出ていれば、奈良支部の人間によって、今頃お前はここには居ない。東京本部で氷殺事件を起こしておいて、どう逃れたのか、不思議なものだ」
「……色々と俺を守ろうとするものが居るんだよ」
「いつも、そいつらが助けてくれると思うなよ」
「助けるさ。お前が置いて来た奴等を殺した後にな」
「今回は助けに来れないな」
「あっ?」
「あそこには楠木が居るそれに、あいつの信頼する男も居る。よって、今回は助けは来ないぞ!」
「……俺達はお互いに切断系統の力を使う事は理解出来ているが、それ以外は何を理解出来ていない。俺はお前の残してきた仲間の力を知らない。お前も俺の仲間の実力を知らない。そうだろ?」
「……ここに居ない者の話をしても意味が無い。ここでの問題はここで解決するまで、向こうは向こうでやってくれるだろう」
「……冷静な判断だな。仲間が殺されても、取り乱すことも無く、対処していたな?」
「……そう教えられたからだ。九十九家は代々戦場で戦える様にと育てられる一族だ。そこに産まれた以上、俺も戦場で戦うのが一族の宿命……って事もないか。俺は俺の為に戦う。今回はチーム[ブレイド]のリーダーとして、仲間の無念を晴らそう」




