第524話 冥府邪剣(めいふじゃけん)
正宗は名殺神剣を楠木は冥府邪剣を鞘に剣を納めると、その神器を消す。
「二人と、六三四が居れば、この場はなんとかなりそうだね」
向かってくる氷に対して、これまで避ける事も、対処もしなかったデュークは陽気に正宗、楠木の告げる。
正宗は特に反論する事は無かったが、楠木は食って掛かる。
「何もしなかった奴がいきなり出て来て、何を言ってやがる?お前もここに残ったなら、戦えよ」
「……そうしたいけど、あの切断力の氷は対処出来ないから」
「笑いながら、言いやがって……ふざけているのか?」
「ふざけてないよ。僕が前にでしゃばって、皆に迷惑をかけるよりも、皆の迷惑にならない様にしているのが、今の僕に出来る事だよ」
「……ここに居る意味が無い。去れ!」
「それは出来ない。魔法を扱えるのはこの場に置いて、僕一人のみだ。もしもの場合の逃走要員としてここに残された以上この使命は全うさせてもらう」
「……ちっ!」
諦める様にして、楠木のはデュークから離れ、正宗の隣に移動する。
「あいつはいつもあのままか?」
「……彼は自身の出来る事に真剣に取り組んでいるよ」
「……俺にはそうは見えん」
「……彼は、通常の人間とは異なる」
「首が無いことか?」
「……知っていたのですか」
「あぁ、デューク・クラークは管理する神の日本支部を任されているチーム[ゼロ]の傘下チーム[三羽烏]のリーダーのデュラーク・クラークによって首を切り落とされたと聞いていたからな」
「だったら、分かる筈だ」
「分かるさ。だからと言って、この戦場で特別扱いをするわけにはいかない。そんな余裕は無い!」
「……ですが、彼は周囲の状況を胸に埋め込まれた魔法石で感知している。通常の人間よりもワンテンポ遅れてしまう」
「だから?あのお荷物を庇いながらやるのか?」
「そうだ。逃走するには彼が必要だ」
「そもそも、逃走する必要があるか?」
「戦場ではいつどうなるのか分からないものだ。もしもの場合に備えなければいけない」
「……逃走するには、あいつが必要だと言うなら、守る理由にはなる。良かったな、俺が納得する理由があって、なければ見殺しにしているぞ」
「でも、出来ないですよ」
「分かってる。守ってやれば良いんだろ」
「出来る限りは、迷惑をかけないようにします」
「気にするな。逃走経路は俺達も確保しておきたいだけだ」
楠木は能力を発動させると、冥府邪剣を手にする。
「取り敢えず、俺達に出来るのは氷の対処だけだ。それだろ?正宗」




