第521話 行方知れず
「どうした?」
「優菜が居ないんです」
「……困るな。資料で見て、知ったけど、彼女の能力完全模倣には攻撃面も防御面も期待していたんだけど。心当たりのある人は居るかな?」
「……多分、東京本部で寝ている状態の田中亮太の元に向かったと思います」
「……一人で行くのは危険だ。チーム[アブノーマル]の魔法を扱える加藤彩美と川上舞は東京本部に向かい連れてきて欲しい」
正平のその言葉に隣に居た厚美は手を上げた舞の元へと向かう。
「私も行くわ。子供達だけに行かせる訳には行かないでしょ?」
「……分かった。お願いするね」
「うん。任せてよ」
彩美の転移魔法によって、彩美、舞、厚美、氷月の四人は東京本部と向かう。
残された者達は転移魔法を行う者によって、青森支部へと移動させられた。
青森支部の中心街に転移されたが、廉、仁、正平は体の震えが止まらずに居た。そのメンバー達も震えていたが、三人の震えかたは以上だった。
「……木山家も檜山家も寒さに弱いからな」
正平のその言葉に廉と仁もその事実を受け止める。
しかし、二人には一つの疑問があった。冬の時期にも寒さを感じていたが、現在の体の震えは以上だ。
「……なんでこんなに震えが止まらないんだ?」
廉のその言葉に正平は答える。
「回りを見てみろ」
正平のその言葉に廉と仁は回りを確認する。
その風景は至るところ全てが凍っていた。それは建物は勿論だが、人間までも凍っていた。
「なんだこれ?」
「木山家も檜山家も水系統なら、蒸発させられるが、氷系統も熱で溶かせるが、レベルの高い氷系統の場合体が拒否反応を起こすんだよ」
「つまり、レベルの高い氷系統を扱う者が居るんですね?」
「あぁ、かなり強いのが居る」
「それで、どうすれば良いんですか?」
「とりあえず、廉も仁を異能、能力を発動しておけ、それで少しはましになる筈だ」
正平のその言葉を受け、仁は紅色の炎を右手に纏わせ、廉は炎神の魔武器を発動させ、炎神の魔剣を右手に握る。
「あれなんとも無くなった」
「……それが不思議なもんでな。なんでそうなるのかは俺にも分からないがなぁ」
「そうなんだ。それでこれから、どうすれば良いんですか?」
「取り敢えず、囲まれているから、こいつらからやる」
「いつの間に囲まれていたんだ?」
「来て早々にだ。剣士として、殺気には気づかないとな」
「……いずれは出来る様に頑張ります」
「まぁ、時間がある時にまた、稽古をつけてやるよ」
正平と廉の話の終わりが見えない事に仁は右手に纏わせていた紅色の炎を大きくさせ、正平を睨み付ける。
そんな仁の殺気に感づいた正平を振り返る。




