第52話 完璧
明神さんと対面している男は腕で防御をする。
どうやらナイフ以外の武器は持っていないようだ。
あの羽は切断能力があるのか?
明神さんは男の腕目掛け、伸びた羽を振るう。
「ああああ、糞が……はぁはぁ」
男は地面に倒れ、明神さんを見上げながら言い放つ。
男が防御した腕はその役割を果たす事なく、切断された。
羽一本であの威力、攻撃を受けたら羽は抜け落ち、攻撃の羽となる。
攻守でこれ程の強さを誇る能力があるなんて……強すぎる。
「僕には勝てないよ」
「明神……殺してやる。ここから出てお前を殺してやる」
「残念だけどここで君の生命エネルギーを奪い取る。奪われれば、君はただの脱け殻だ」
「殺す」
明神さんの足元に落ちている羽が宙に舞う。
宙に浮いている羽は男に向かって飛んでいく。
手に触れずに操作も出来るのか。
男は避ける体力が無いのか、全く動かない。
羽は男の目の前で止まった。
「これで分かったろ、君じゃあ僕には勝てない」
明神さんは男に近寄り胸ぐらを掴み、引きずりながら鉄扉に向かい歩いていく。
「あの男はどうなる?」
僕は隣に居る氷雪に聞いてみた。
氷雪は迷う事なく直ぐ様答えた。
「日本のエネルギーになる。紫音覚えておけ、この世界は俺達が思うよりも残酷だ。そんな世界で生きていく以上何度もあるぞ。受け入れがたい現実は」
僕の知っている氷雪となにかが違う。
変わってしまったのか?
「昔の貴方なら……」
「昔ならな」
「何があったんですか?」
上原家歴代最強と言われ僕の憧れだった氷雪はどこに?
氷雪……貴方はいつでもどんな時も完璧を目指していた。
「何も……ただ知ったのさ。強絶と会って、あの頃の俺はただ完璧を目指し強さを追い求めていた。授業の一環で強絶と手合わせをした時、俺は手も足も出なかった」
[雷帝軍]のリーダー橘強絶はそんなに強いのか?
だとしてもそれで諦めたのか?
「俺は完璧を求めていたが強絶に言われ、俺は[雷帝軍]に入ると決めた」
「何って言われたんだ?」
「不完全なこの世界で完璧な人間、物はこの世にはない。完璧な人間、物が生まれるとしたらそれは完璧な世界のみ、だが、それは難しいと思わないか?……日本だけなら出来ると思わないか?と」
「だから、[雷帝軍]に入ったのか?」
「そうだ。俺はこの日本を完璧にする。そうすれば俺はなれるかもしれない。完璧な人間に」
橘強絶は何を企んでいるんだ?
氷雪、明神明に当麻総一朗の四人で結成されたチームのリーダー。
これほどの人材を集める程の魅力が橘強絶にはあるのだろうか?
氷雪は日本を完璧するとゆう強い意思を感じる。
今から僕が止めた所で止まる様な男じゃあ無い。