第507話 黒御雷(くろみかづち)
「つまり、ケルベロスの頭が増える程、威力等が増加されるって事か?」
(あぁ、頭は三つしか無いから。それが最大だと思うが)
「マントに二つの頭がある事で、俺の赤雷を越える速度の移動が可能になっていたな」
(あぁ、で、どうする?)
「……」
(まさか、赤御雷を使うつもりか?)
「……あれは、鬼神の体を持ってしても、ダメージを喰らってしまう。それは、避けたい」
(では、どうする?)
「黒御雷で行く」
(それも手に纏うだろ?)
「常に全身を纏わせる赤御雷とは違い、放つまで手に纏わせる黒御雷のほうが遥かに良い」
(……分かったよ。止めねぇよ)
「さって、少しばかり本気で行こうか」
立ち上がった流島は全身を覆う赤い雷とは別に右手に黒い雷を纏わせる。
その黒い雷には所々、白色が混ざり、激しさを増す。
赤雷を全身に纏っている流島は高速移動で翔の背後を取る。
「黒御雷」
流島は翔の頭上に目掛けて、白色が入り交じった黒い雷を放つ。
防御が遅れた翔は地面に叩きつけられる。
一瞬、意識の飛びかけた翔はなんとか意識を保ち、流島との距離を取る。
(流島。どうだ?)
「なにがだ?」
(攻撃がヒットしただろ?)
「あぁ、感触としては良かった」
(……このまま行ければ良いが)
「逃げる事が出来たんだ。まだ、やれるだろうよ」
(なんだか嬉しそうだな)
「そうか?」
(あぁ、とっても)
「そうか。嬉しそうにしているのか?……そうかもしれないな」
(そんな余裕なんて、無いぞ。目の前の敵さんは準備万端の様だ)
「あぁ、嬉しいだけでは無い。ここからは楽しまないとな」
(……それも違う!)
「では、どうだと言う?」
(真剣にやれ!)
「だから、真剣に楽しむつもりだ」
(はい、はい。好きにしろ)
「そう言うと思った」
不敵な笑みを浮かべる流島に翔は迫る。
流島は再び、白色が入り交じった黒い雷を右手に纏わせる。
迫り来る翔に目掛けて、白色が入り交じった黒い雷を放つ。
「黒御雷」
翔は一瞬にして、マントにケルベロスの頭を三つにさせる。
それによって、翔は流島の黒御雷を避けると共に、流島の背後を取る。
背後を取った翔はマントのケルベロスの頭三つを右手に移動させる。
翔はそのまま、流島の背中を殴り付ける。
流島は今までに無いほど吹き飛ばされ、吹き飛ばされる。
(……ここまで、吹き飛ばされるとは……大丈夫か?)
「あぁ、かなり効いたがな。これはしばらく立てねぇな」
(冗談言ってないでさっさと立て)
「冗談って言う威力じゃあねぇよ」




