第501話 土遁我流流砂(どとんがりゅうりゅうさ)
「……全く、埋めされるのは痛くも痒くも無いが、服が汚れるのは苛立つな」
(心配するな。そう言うと思って、マントで全身を覆っておいた)
「……それはありがたい」
(……最初から全力だとは思えない。次に備えろよ)
「あぁ、服の汚れに関する以外は手を出すな」
(はい、はい)
全身を包んでいたそのマントは通常のマントへと戻っていく。
「……流石は流島家の人間だな」
「関係ねぇよ。が、流島家の血は否定はしねぇがな。俺の能力は今までの流島家のものとは異なるぞ!」
流島は右手に炎を左手を雷を纏わせる。
そんな流島の姿を見て総助は言葉を失う。
「通常の流島の人間は鬼神やそれに別属性が加わる事があるみたいだが、お前の能力は今までの流島家の伝統を逸脱している」
「お前の我流もだろ?力は法則や常識を逸脱してこそ、最強の域へと到達するものだ」
「……否定は出来ないな」
「だろうな。土石ごときでは俺は倒せんぞ」
「まだ、分からないだろ?土遁我流流砂」
総助は印要らずによって、再び土石の山を津波の様にして流島の元へと送り込む。
「……だから、それごときでは流島家に伝わる鬼神の力によって体の強化されている俺には傷一つ付けられんぞ……それ以前に、雷を防ぐ程の強度も無い土石の山では何も出来ん!」
流島は右手を前に突き出すと、一瞬にして雷を放つ。
それと同時に、津波の様に迫り来る土石の山は一瞬にして、巨大な規模へと変化していた。
(……普通の術から我流によって規模を変化させたな)
「……みたいだな。が、意味が分からん」
(だな。このタイミングで規模を変化させても意味がない。雷を止められて無いしな)
「俺の攻撃を凌ぐ為にやったわけでは無く、別に何かあるのか?」
流島のその疑問は直ぐに晴らされる。
流島の雷は土石の山の中心に風穴を開けたものの、その殆どがまだ残っていた。そんな土石の山は一瞬にして圧縮される。
「……形が変わったな。それも我流の特権だな」
「……随分と余裕だな」
「成る程、最初から土石の山の内部に潜んでいたようだなぁ」
「……その余裕綽々の顔を直ぐに変えてやる」
総助は土石の山の全てを己の右手に集中させる。
右手に集中した土石は竜の形へと変化していた。
総助は土石に包まれた右手と通常の左手を勢い良く叩き合わせる。
「土遁我流土竜」
総助は右手に纏わせている土石によって造られた竜で流島へと殴りかかる。
(……警戒しろよ。土石の山で身を隠し、ここまで接近するからにはあの竜にはよっぽどの自信がある筈だ)




