第50話 地下施設
氷の綱鉄剣は石原家の家宝の筈だ。
異能力から奪い取ったとされる剣をどうして氷雪が?
「その剣は……どうした?」
「お前なら分かるだろう。これは氷の綱鉄剣だ」
「……見れば分かる」
氷の綱鉄剣の刀身は氷の様に思わせる程、透き通っている。
更にあの刀身の切り味は凄まじく、刀身についた血は付着すると共に直ぐ様流れ落ちる。血が付着することが無い為氷の綱鉄剣は錆びる事が無く、世界でトップクラスの美しさと言われている剣だ。
「石原碧人の身柄と交換したんだ」
「あの時に現れたのは氷の綱鉄剣を石原家から効率よく奪うためか?」
「そうだ。石原家は石原碧人を手放したくは無いからな。木山廉には感謝しないとな」
「何で、廉が?」
「木山廉が檜山仁を倒したからこそ今俺の手には氷の綱鉄剣がある」
あの時氷雪が現れたのは氷の綱鉄剣の為だけ……
氷雪の能力瞬間冷凍と石原家の家宝で石原家が奪い取ったとされる氷の綱鉄剣……瞬間冷凍と氷の綱鉄剣この組み合わせはかなり不味い。
「それでどうする?」
「こんな事、許される訳無いだろう」
「こんな事?俺もお前もこの日本中の全て人間はこの地下のエネルギーで生活している。お前がここまで大きくなれたのはこの地下施設があったからこそ」
日本中にこの施設があるのか?
「何で日本はこんな施設を作った」
「日本?……違うな世界だ」
世界中で……
嘘だろ。
こんな施設が世界中に……
これを否定するって事は世界のエネルギー開発を否定する事になる。
僕一人で解決出来る問題じゃあ無い。
「氷雪、こんな所に人を連れ込むなんて」
僕の後ろから声がする。
聞いた事もない声だ。
美しい声だ。
僕は後ろを見てみる。
「……その制服、東京本部の生徒みたいだね」
その男は白い髪に制服の上に白衣を着ている。
僕の目は右が赤、左が青のオッドアイが特徴的な男だ。
「氷雪が連れてきたのか?それとも迷い子かな?」
「……俺の連れだ。明神」
明神?
[雷帝軍]のメンバー明神明。
世界でも珍しい天使属性の能力者の一人。
それにしても氷雪は何で嘘を……
「そう。名前は?」
「……佐倉紫音です」
「……確か上原家の養子の子か?」
「……はい」
明神さんの後ろに人が居る。
まさか?
扉の向こうに連れていくのか?
だったらあの人の生命エネルギーを奪われるのか?
明神さんの後ろに居る人は酷く怯えている。
「明神」
氷雪は叫んだ。
明神さんの後ろに居る男はナイフを握り、今にも刺し殺そうとしていた。
明神さんは後ろを気にする様子もない。
「大丈夫、分かっているだろ」
後ろに居た男はナイフ明神さんに刺した。