第467話 勧誘
伊織は控室の扉に手をかけた氷川に声をかける。
「氷川氷君。少し良いかな?」
「駄目だ」
「……そう切り返すか」
「お前は提案しただけだろう?」
「確かに強制はしないけど……君にとってはとても良い話だと思うけど」
「……」
「話を聞くだけでもどうだい?」
「……良いだろう。しかし、聞く価値が無いと判断した時点で俺は帰るぞ」
「それでも構わない」
「……良いだろう。で、どこで話を聞けと?」
「……そうだな……どこが良いかな?」
「良ければ、控室でも良いぞ」
氷川のその発言に今まで伊織の隣で大人しく立っていた内藤は精神共有によって伊織の頭の中へと直接言葉を送っていく。
(伊織様。危険です)
内藤の精神共有によって意思の疎通が可能となっている事を利用して伊織は言葉を口に出すこと無く、直接考えた事を内藤へと伝えていく。
(危険は承知だよ。それでも行く価値はあると思うけど)
(……分かりました。何があってもお守りします)
(あぁ、その時には頼むよ)
二人は精神共有によって会話を終えると氷川の提案通り控室での話し会いをそこで行う。
控室にはチーム[ブリザード]の全員が揃っていた。
「……チーム[ブリザード]の構成員は中々の面子だな。上原家から追放された上田家の者に氷川家、石原家、佐倉家にまさか……上原家まで居るなんてどうやって集めたのか気になるな」
「そんな事はどうでも良い。用件を言え」
「……取り敢えず、自己紹介から始めようか。僕はチーム[ドミネーション]のリーダーをしている小淵沢伊織と隣に居るのはチーム[ドミネーション]の幹部の一人内藤忠だ。用件はただ一つ。チーム[ドミネーション]の参加に加わって貰いたい」
「断る!」
何の躊躇も無く、即答した氷川に戸惑っている伊織を気にかける事無く、氷川は続いて言葉を続けた。
「俺達にはなんのメリットも無い」
「メリットなら全員ある。君が氷付けにしてまでも守りたがっている母君も守るにはチーム[ブリザード]だけでは守りきれるものでは無いことぐらい理解出来るだろう?」
「……」
「それにチーム[ブリザード]のメンバーの諸君達、世界でも珍しい氷系統の力を狙うものは後を経たない。それは君達は今まで生きていて理解出来ていると思うが」
「……俺の一存では決められない」
その発言に伊織は不適な恵美を溢しながら氷川の元へと駆け寄る。
「では、君だけでも入ってくれるのかい?」
「……母を守るだろうな?」
「……一つだけ聞いておくよ。何故、遺体を守る?」




