第464話 精神共有(テレパシー・ジャック)
吉凶は雷で覆われていた地面から少し離れた場所に立つ内藤を見つけ出す。
「未来を知った位で雷の速度に対応出来るのか?」
(こうして、お前の頭に直接話しかけているのは私の能力の一つ精神共有によるものだ。私の言葉を一方的にお前に送る事もお前の考えを受け取る事も私には可能だ。つまり、お前が攻撃するその瞬間に私はそれをお前の頭から読み取る事ができる)
「……未来予知と他者の考えを知る事が出来る能力と移動系統の能力を持つか……確か五つの能力を所有していると言ったな?」
(そうだ。ようやく、勝てないと悟ったか?)
「……何も分かって無いな。勝つのは俺だ」
吉凶のその言葉に内藤はため息を漏らす。
(……私の精神共有がお前の思考を読み取り、こちらの言葉を送るだけだと思った?)
内藤は精神共有によって大量の情報を一瞬にして吉凶の頭の中へと送っていく。
その情報量を一瞬で処理が出来る訳も無く、吉凶は頭を抱え、ふらつきながらもなんとか立っていた。
そんな吉凶は全身から溢れ出す雷を維持出来ずに徐々に雷が弱まっていく。
そんな吉凶の隙を見逃す事無く、内藤は行動を開始する。
部分移動によって吉凶の目の前に出現した内藤は吉凶の右頬へ固く握られた右こぶしを振るう。
絶え間なく、大量の情報を送られている吉凶は防御をする間も無く、内藤の一撃によって地面へと倒れ込む。
(実力等は工夫次第でなんとでも出来る)
「……だ、だま……黙れ!」
吉凶は大量の情報を送られている中、拙いものの、なんとか声をだす事に成功した。
(……喋る事も儘ならないその状況で異能もまともに使う事も出来ないお前が私の攻撃をどう凌ぐつもりだ?)
「……」
(答える事も出来ない様だな)
内藤は答える事も出来ず、倒れ込む吉凶を蹴り飛ばす。
その内藤の蹴りによって吉凶は壁に衝突する。
「……はぁ、はぁ」
(どうだ?異能に頼りきったお前では、使えないこの状況を打破する事は出来ないだろう)
「……」
(お前との会話はこれで最後だな)
吉凶はふらつきながらも立ち上げる。
大量の情報の送られている吉凶は上手く、異能を発動させる事が出来ないこの状況で一つだけ改善出来る方法を思い浮かぶ。
しかし、それは無能力者だった内藤への敗けを認める様なものだった。
それだけは、なんとしても避けたい吉凶は別の方法を考える。
そんな吉凶の目の前に立ち尽くす内藤は何度も吉凶へ拳を振るう。
無能力者だった内藤にこれだけの事をされた事によって吉凶は決意を固める。




