第454話 無能力者の才能
「……違うな」
伊織は一瞬にして、睦月のその言葉を否定する。
「何を根拠に?魔法が使えない奴が魔法陣を出現させる事なんて出来る訳無いだろ?」
「……あぁ、魔法陣の出現させる事は出来ずとも、書く事は出来るだろ?」
「……書く?」
疑問を抱く睦月に伊織は魔法陣が描かれた床を手に触れ、貼られたシールでは無いことを確認しながら、自身の考えが間違い無いことを確信する。
しかし、睦月は未だに疑っていた。
「まだ疑っているのか?」
「あぁ、この魔法陣あまりにも綺麗過ぎるだろ」
「そうだな」
伊織は震える少女の手を優しく触れる。
「恐れる必要は無い。無能力者達は能力者に焦がれる癖に、その力が手に入らないと知ると、能力者に意味嫌い遠ざけ現実逃避で自己を保とうとする。しかし、では無能力者のままで満足何て出来ない……君だってそうだろ?だからこそ、君は魔法を選択したんだろ?」
「……」
「魔法は無能力者でも戦う事が出来る。魔法石を利用したりとかね。でも、一番簡単なのは描く事だ。君の様に、ね!」
「……」
「手書きで書いたのかい?」
「……」
「……この円綺麗だ。コンパスを使って書いたのかい?」
「……この……チョーク一本しか……使ってない」
「手書きでこの精度……天才だ。嫌、必然か。無いものを得ようとするその努力は無いものにしか出来ない努力だ。弱さ故に力を求め、強者を目指す。その君の弱さは強さだ。この魔法陣で何をしようとした?」
「お母さん……に、もう……一度」
「そうか」
少女が言おうとした事を理解出来た伊織はそれ以上の言葉を聞く前に少女の話を猜疑る。
「一人だけ言っておく、人体の想像は賢者の石を利用しても成功する可能性は極めて、低い。それに、世界的にも成功例は何度もあったみたいだけど、持っても一日が限度だ。それでもやるのか?」
「……なんとしても、聞きたい事が……あるの?」
「分かった。魔法陣を描いた事に対して岩手支部は君を捕らえにするだろう。しかし、君は間違ってない。手を伸ばせば、掴めるなら誰でも掴む。絶対にな。この無能力者しか認めないとほざく、能力者育成機関から見放された奴等が勝手作った鳥かごに居ては自由になる事は出来ないだろう。だからこそ、僕がこの鳥かごを壊そう。君が鳥かごに残るのか、それとも自由に羽ばたき、この鳥かごから外に出るのか。でも、飛びかたも分からないと言うなら……」
伊織は震える少女の顎を右手でクイッと上げると、その力強いその目で少女を見つめる。
「僕が教えよう。付いて来るかい?この父親を捨てても敵わないと言うならだけど」




