第45話 氷殺事件
廉、舞がさっきにいっている追いかけよう。
「紫音君、ちょっと良い」
一年の異能クラスの担任の羽田海斗先生……一体なんの用件だろう?
「何かありました?」
「深夜に殺人事件が起きたんだ」
殺人?
……何で僕に?
「それで僕に何か?」
「警察の方々が紫音君に事情聴取をしたいらしい」
「僕は疑われているのですか?」
「……今回の事件、氷殺事件の事情聴取は氷系の能力、魔法を扱える者が全て対象になるみたいだ」
全て?
氷系の能力は少ないが……わざわざ全ての能力を集めるなんて……
「分かりました。どこに行けば良いですか?」
「地下にある警察署って言えば分かるかな?」
「はい。分かります」
地下警察署か……
まずは向かうことにしよう。
「紫音?何処かに行くのか?」
廉は心配そうに話しかけてくれた。
心配かける訳にはいかない。
「何でも無いよ。ちょっと用事が出来ただけだよ」
「本当か?」
「……うん」
「何かあったら連絡しろよ」
「うん。ありがとう」
僕を心配してくれる人はここに居る。
ここが僕が戻ってこれる場所なんだ。
僕は地下にある警察署に向かう。
「では、この部屋で待機してもらう」
僕は地下にある警察署の部屋の前に立っていた。
この部屋の向かうには日本中から氷系の能力が集められている。
ここまで案内してくれた警察官は僕が部屋に入るのを待っている。
早く、入ろう。
中はとても広い。
今この部屋には30人位居る。
「紫音……久しぶりだな」
……上原の人間か?
取り巻きが二人居るみたいだ。
相手にするだけ時間の無駄だな。
僕は話しかけてきた男から離れる。
「てめえ、待てよ」
僕は立ち止まり、振り返る。
「何か?」
「忘れてのか?上原家で飯を食わせてやったろうが」
「否定はしないが上原家にだ……君では無い」
「神異能があるからって調子に乗るなよ。お前は上原家で子供を作る為だけに居た存在だろうが」
……上原家、何処にも僕の居場所は無かった。
でも、そんな僕でも帰る場所が出来たんだ。
「子供って何だよ?」
取り巻きの一人が馬鹿にするように話している。
それに対して僕を見ながら返答する。
「上原家は氷系の能力を増やす為に紫音と上原氷雪の妹の上原氷月との子作りをする計画を進めていたらしい。だが、紫音君は恥ずかしくなったのかな?東京本部に逃げたらしいよ」
その男はニヤニヤと笑いながら、僕を見つめている。
この話で僕が否定をする事は無い。
これは過去の話。
男は話を続ける。
「紫音お前も馬鹿だな。あんな良い女だったら俺は抱いてたぞ。俺は親族だから出来なかったが、それとも紫音君は自信が無かったのかな?」