第443話 黒呪術(ハイパーロード):妖魔術
「だろうな黒魔術:妖術だけでは魔神化は出来ないからな。黒呪術のなにかだろ?」
「そうだよ。黒呪術:妖魔術だよ。妖術は勿論だけど、魔属性が付加され、この攻撃力は格段に上がる。妖術は相手からエネルギーの吸収しか出来ないから攻撃力が致命的だけど、妖魔術によってその弱点を補ってるのさ」
「……そうか。エネルギーを奪い己の力に変換出来ているお前はそれを攻撃力に変換出来るんだろ?」
「ああ」
「ちっ!だったら、エネルギーを奪えば奪う程、お前の攻撃力は増すばかりだろうが」
「……そうだよ。それが僕の妖魔術だからね。それじゃ、今度は僕の番だ」
琢磨は黒い魔法の爪を纏わせた右手を仁に向けると黒いオーラを大量に放出させる。仁は避ける事なく、右手に纏わせていた紅色の炎を放ち琢磨の放った黒いオーラへとぶつける。
ぶつかり合う紅色の炎と黒いオーラはお互いの力によって互角にぶつかり合っていた。紅色の炎は黒いオーラを消滅させ、黒いオーラは紅色の炎のエネルギーを奪い、仁と琢磨は攻撃を同時に止める。
「僕の妖魔術と同等なんて驚いたな」
「……俺の炎は全てを消滅させてきたんだが……消滅出来なかったのは久しぶりだ」
二人はその一撃に全てをかけ、倒すつもりだったその攻撃で決める事が出来なかった事に戸惑う。
そして、二人は同じ答えに行き着く。
どんなに攻撃しても相殺されるなら、直接本人を狙うことを。
仁は両手に紅色の炎を纏わせるとなんの迷いも無く走り出す。
そんな仁の行動と同じく琢磨も黒い魔法の爪から黒いオーラを溢れ出させる。しかし、二人とも攻撃する様子は無くタイミングを伺っていた。
仁は琢磨の懐へと足を進める。
これ以上距離を詰められると仁の紅色の炎への防御が遅れる為、琢磨は反撃に移る。琢磨は全身から黒いオーラを放出させ、辺りを黒いオーラで覆い尽くす。
仁の姿が黒いオーラに包まれた事によって、離れた位置に居た碧人は思わず声を荒げる。
「仁!早くその黒いオーラから抜け出せ」
碧人のその声は仁の耳に届いていたものの、仁は動こうとはしなかった。
それは妖魔術の黒いオーラに体中が触れているにも関わらず、体力、生命力が吸収されていなかったからだ。
そんな事実に一番驚いたのは仁自身だった。
何故、妖魔術によってエネルギーが吸収されないのか分からなかったが、このチャンスに仁は動き出す。
紅蓮の炎の能力以外にも魔法を扱う事が出来る仁は両手に纏わせていた紅色の炎に魔力を送る。
 




