第44話 明日の事
僕達は能力者育成機関東京本部にある高校に向かう。
朝のこの時間は学生達が多く、警備員も多く見える。
今日は一段と警備員の数が多い。
昨日の事件の影響か?
「あれ、また先生校門に立ってるな」
廉に言われて僕は先生に目を向ける。
昨日は廉を会議室まで連れていって新入生代表を頼んだらしい。
新入生代表と言えば明日北海道支部の代表と手合わせをすると聞いたけど……
廉は覚えているのか?
「そう言えば明日新入生代表として北海道支部の代表と手合わせをするんだろう。何か準備はしているの?」
舞は初めてこの話を聞くのか?きょっとんっとしている。
隣に居る廉も驚いた様子を見せる。
まさか……
「知らなかったの?」
僕は廉に確認してみる。
「……そう言えば言われた様な」
廉は曖昧な返事をした。
「じゃあ、明日廉は北海道支部と戦うの?」
「そうみたい」
「何で北海道支部なの?」
「それは……」
廉と目が合った。
どうやら、代わりに答えた方が良いみたい。
「理由は簡単でここ東京本部は異能力、能力者が多い反面、魔法を扱う人が極端に少ない上に強い人間が余り居ないんだ。だからこそ強い魔法を扱う北海道支部と交流会を年に二回春と秋に行われるんだ」
「北海道ってそんなに魔法を使う人が多いんだ」
舞は笑顔で納得した様子だ。
隣に居る廉は無言のまま、動かない。
手合わせの相手を知って、何かを考えているのか?
相手は北海道支部の一年で新入生代表。
間違いなく強い魔法を使ってくるはず……
「紫音、北海道支部って誰が新入生代表なの?」
「紫音知ってるのか?」
舞の質問に廉は食い付く。
二人とも僕の返事を待っている。
「知っているよ」
「どんな魔法を使う」
廉はやはり、気になるみたいだ。
「確か、神田翔だったと思う」
「神田翔?」
「知らない?」
「あぁ、初めて聞く」
「簡単に説明すると神田家の人間だよ」
神田家は北海道を拠点とした家系で北海道に居る名門の中でトップに君臨する。北海道の人間は魔法の扱いに長けていて、神田家、加藤家、当麻家は常にトップに居る。
「紫音、神田翔って強いのか?」
返答しづらいな。
「強いかは、分からない。……だけど弱くは無いね」
「そっか、じゃあ強いんだな」
「だぶん、神田家は雷属性の魔法を扱う人間が多いから廉と戦う相手も雷属性の魔法を使うと思う」
「雷か……今考えても仕方ねぇ、早く行こうぜ」
廉はゆっくりと歩いていく。
舞は廉の後を続いて歩いていく。
明日の手合わせは楽に勝たせてくれる相手じゃあ無い事は確実だ。




