第348話 視覚加工(モザイク・アート)
大は手を春樹の方へと伸ばし、手を広げる。
その瞬間、春樹は急にキョロキョロと周りを見渡す。
「……俺の能力は視覚加工。対象にした者の視界全てにモザイクをかける能力。これなら、お前の移動の能力も上手く使えないだろ?なんせ、お前の見る物全てにモザイクがかかってるんだからな」
「そうか。対象にする物が見えなければ、あいつの位置を入れ替える能力を無力化させる事が出来る。良くやった大」
「……佳祐。俺の能力は視界のみだ。声は通常通りだ。声で位置が特定されるぞ」
大のその一言に佳祐は声を出さずに春樹を取り押さえる方法を考えていた。そんな佳祐の視界にさっき投げ捨てた魔法の鎖が目に映る。
「……あいつを魔法の鎖で縛る。協力を頼む」
佳祐は小声で雄太と大に告げる。
それを受けて、雄太と大は同時に走り出す。
春樹は大の能力の視覚加工によって目に映る全てが、モザイクがかかっており、正確に周りのものが見えない状況ではあるが、何かが動き出した事だけは把握出来ていた。
春樹は動いているものと自身の居場所を位置交換を発動させて位置を一瞬にしてして入れ替えた。
目に映る全てがモザイクとなっている春樹は取り敢えず、位置を何度も変え、敵の攻撃に対応する事しか出来なかった。
雄太と大が派手に動き回っている最中、佳祐は春樹に気づかれない様に移動を続け、地面に落ちている魔法の鎖を手にする。
佳祐は近くに居た雄太に魔法の鎖を持たせると、佳祐は雄太の周りを派手に走り回る。
そんな動きをモザイク越しに見た春樹は走り回る佳祐との位置を入れ換えた。春樹が入れ換わると、そのすぐそばに居た雄太は手にしていた魔法の鎖で春樹を縛り上げる。
魔法の鎖によって体中を縛られた春樹は手の自由と能力を封じられてしまう。
「これからどうする?佳祐」
「……大は佳奈様を背負ってくれ。雄太と俺は佳奈様の護衛しながら、重信様に合流しよう」
四人は魔法の鎖に縛られた春樹を置き去りにして、重信の居る場所まで徒歩で移動を開始する。
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佳祐が捕らわれていた雄太と大の解放に成功して、重信と合流しようと動き出していたその頃、重信と国光の戦いは始まっていた。
二人の戦いは国光が深淵神竜によって体全体を黒い竜の鱗を纏い、重信がその鱗を縫合抜糸によって黒い竜の鱗を縫い合わせて、直ぐ様抜糸によってその箇所を破壊するを繰り返す戦闘が続いていた。
そんな二人は能力の使い過ぎで体力的にも限界に近い状態にあった。




