第436話 本家と分家
男が頭を悩ませていたその瞬間、大きな翼を持つワイバーンの姿と化した国光だったが、右翼が一瞬にして切断される。
男は右翼を切断した者を目にしてこの戦いの勝利を確信する。
「重信様」
「……来てたのか?佳祐」
「はい。佳奈様の容態が芳しく無い為、雄太の元へと連れていきたいのですが」
「好きにしろ」
「ありがとうございます」
佳祐は重信にその場を任せて、捕らえられている雄太の元を目指し、歩き出す。
「……魔眼の女はぐったりとしてるな。佳奈によってか?それとも佳祐にか?……どちらにせよ一番警戒するべき人間が居なくなったのは嬉しい事だがなぁ」
重信によって右翼を切断された事によって飛行を続ける事が出来なくなった国光は地面に倒れ、黒い竜の鱗を全て取り除き生身の国光だけがその場に座り込んでいた。
「……翔子一人にびびるとは情けねぇな」
「座り込みながら、言われてもな。立ってからほざけよ」
「……骨粗鬆症になった事なんて無いから怖くて立てねぇよ」
「……そんな簡単に骨折なんてするかよ。衝撃が加われば、折れるがな」
「……人質に二人とさっきまで居た二人は金川家の分家の者だな。嫌、金田重信お前も……そうだろう?」
「……知ってるか?名門を名乗る一族には本家と分家が存在していることを」
「それぐらい知ってる」
「だったら、そのその達が最初は同じ苗字を名乗って居た事もか?」
「……」
「その沈黙は知らなかったって事で良いな?金川家は日本最高の医療機関と知られ、千葉支部内でも扱いはトップグラスだった。しかし、医療を発達させる為に非合法な解剖を繰り返した。それが発覚したその時、金川家はどうしたと思う?」
「……さぁな?」
「……全てをある家族に擦り付けた。その家族は金川家に深く携わっており、信頼もあった。だからこそ、金川はその家族を分家として扱いそれからその家族は金田家を名乗る様になったと言われる。まぁ、今から数百年前の話だがな。佳奈も金川家の分家の金沢家を名乗っている。金沢家は金川家の手術の失敗時のみだけ使われる家系だ。毎回その場に居るだけで、手術に失敗した時のみ全ての責任を押し付けられる。他の三人も同じだ。金川家が頂点に立つ事だけの為に俺達分家の者達は常に道具として扱われる」
「……だからと言ってー」
「お前が何を言おうと関係無い。金田家に産まれた以上俺は毎日解剖の日々だ。金田家の最初は非合法な解剖から始まったが、現在では日本中から解剖の依頼が仕事としてやってくる。全く浮かばれねぇよ」
「誰がだ?」
「先祖だ」
 




