第435話 超電動波(バイブレーション)
佳奈は翔子が立ち尽くしている事を確認する。
立ち尽くすその姿はさっきまで佳奈そのものだ。
佳奈は翔子の左目に突然現れた魔法陣を見て、その目がどの様なものなのか理解していた。
「魔眼」
「……魔眼は使い手によって様々な効果がある。私の場合、相手によって受けた攻撃や体の状態を全て移し変える。まぁ、相手が瀕死なら、私も瀕死になるわけ……状況によって使わなければ、痛い目に合う。今回は上手く行ったけどね」
佳奈は翔子の背後を取った男の姿を見て、不適な笑みを溢す。
「……この世の中、そんな上手くは行かないわよ」
男は翔子の頭付近に手をかざし、能力を発動させる。
その瞬間、翔子は気絶して、倒れ込む。
「翔子!」
突然、倒れた翔子に駆け寄ろうと巨大な二足歩行の竜と化した国光は動き出す。その巨大な竜が地面を踏みしめた瞬間、地面は揺れた。
その揺れに戸惑う事なく、男は冷静に地に手をつけ、能力を発動させる。
「俺の能力は超電動波。体の全身を振動させる事が出来る。空気等も振動出来るが、地面に手を触れれば地震も起こす事も出来る」
男が地面に手に触れ、能力によって振動を起こし、地震を起こす。
巨大な二足歩行のドラゴンと化した国光はバランスを取る事が出来るわけも無く、体勢を崩し倒れ込む。
翔子と国光の動きを止めた男は佳奈の元へと駆け足で駆け寄る。
「佳奈様。大丈夫ですか?」
「……ええ、なんとかでも、私は病状を与えるか病状の進行を早めるか遅くさせる事しか出来ない。この高熱を治すには捕らえられている彼の元へと行く必要があるわ」
「分かっています。連れていきますから」
佳奈は男に肩を預け、連れていかれる。
そんな二人は急な突風に足を止める。
男はなんとか風が吹いてきた方向に目を向ける。
そこには先程までは黒い竜の鱗に覆われた巨大な二足歩行型のドラゴンの姿だった国光が現在では大きな翼をはためかせるワイバーンの姿と化した国光が飛行を続けながら、二人の前を塞ぐ様に飛んでいた。
「邪魔をするな」
男は能力の超電動波を発動しようとしたが、佳奈を連れている為、佳奈にも影響を及ぼす恐れがある。
超電動波をしようして空気を振動させようと考えていたが、近いに居る佳奈がここに居る誰よりもダメージを受ける事は男が一番理解していた。間違い無く、ここで超電動波を発動すれば、佳奈は脳震盪で気を失うだろう。
敵になら躊躇なく、脳震盪にさせるが、佳奈を脳震盪にさせる理由など無い男は能力を使用せずに、この場を逃れる方法を考える。




