第429話 チーム[シャドウ]
山梨支部代表チーム[クリムゾン]vs静岡支部代表チーム[グレイプニル]の戦いも終盤に差し掛かった頃、大阪支部代表チーム[イビル]の面々は千葉支部代表チーム[シャドウ]の居場所を掴んでいた。
「国光。ここに居るみたいだ」
「そうか。準備は良いか?翔子、春樹」
国光のその問いに二人は無言で頷く。
それを確認した国光は廃墟となった工場へと足を進める。
その後を翔子、春樹は続いて歩いていく。
廃墟となった工場は所々壊れており、煙が絶え間なく出ていた。
そんな廃墟と化した工場内を警戒しながら、三人は足を進めていた。
そんな時だった国光と翔子だけは、目の前に居る男を発見すると共に警戒を強める。
その男の事を良く理解出来ていなかった春樹は二人の警戒する様子から目の前の男がただの男では無いことを悟る。
「金田重信だ」
国光は春樹に目の前に居る男の名を告げる。
それによって春樹は目の前に敵対する相手だと正しく認識する。
「……さっきと違って、一人男が増えたか……でも、俺には勝てない。俺も仲間を呼んだ、来るのは四人だ。つまり、今回の大会に参加する全員だ。チーム[イビル]は残りの二人を連れて来れるのか?」
「いや、呼んですらいない」
「三人では、俺すら倒せない」
「やって見なければ分からないだろ?」
「田中国光。さっきの戦いで何も学んで無いらしいな」
「したさ。だからこそ、それを生かした戦い方をする」
「……やってみろ」
重信は全身から糸を放出させる。
重信の全身から伸びた糸は工場の天井、床に接触すると一瞬で糸が継ぎ接ぎではあるが、縫われていく。
「……縫ってどうするつもりだ?」
重信の能力を正しく理解していない春樹は重信のやった行動を何一つ理解出来ずに首を傾げていた。
そんな春樹に国光は直ぐに能力を説明する。
「金田の能力は縫合抜糸だ。全身から凄まじい強度の糸をだし、糸に触れたものを一瞬で縫う事が出来る。そして、警戒するのは二度目に糸が触れた時だ。二度目に触れた糸は縫われていた糸を抜糸させる事が出来る。抜糸された箇所の糸が消滅するとその部分は切断される」
「そんだけで切断されるのか?」
「そうゆう能力だ。縫われてもなんにも感じないが、建物の糸を抜糸した時には建物を簡単に崩していた。警戒しろ」
「……縫われなければ、抜糸される事も無いだろ?」
「糸を目視する事すら、難しい。あいつの僅かな動きだけで把握するしか無い」
国光からの能力説明に春樹は目の前に居る男の強さを何となくではあるが、把握するものの春樹はそんな相手とどう闘えば良いのか、その答えを直ぐには出せずにいた。




