第426話 強度の魔法陣
翔馬は普通に魔法陣を飛ばしては氷の金剛石によって造られた氷を破壊することは出来ない事は痛感していた。
そんな、翔馬は硬く握られた右手を顔付近まで上げていた。
「何をするつもりだ?」
碧人は翔馬のその行動を理解出来ずに聞いていた。
碧人のその問いに答える事なく、翔馬は行動に移す。
翔馬の右手に浮遊していた小さな魔法陣は回転を始める。
その回転と共に大きな魔法陣も回転を始める。
翔馬は右手付近で回転している小さな魔法陣を碧人にめがけて、殴り付ける。それに連動して回転している大きな魔法陣は碧人の元へと迫っていく。
回転しているだけで、さっきと全く同じ魔法陣に警戒することなく碧人は未だに目の前に残っている氷の元から離れようとする事なく、その氷で魔法陣を凌げると判断していた。
回転している大きな魔法陣が氷の金剛石に激突すると、激しい音と共に僅かに氷の破片が辺りに散らばる。
しかし、少しだけ削っただけで、魔法陣の回転は氷に食い込み止まっていた。このチャンスを逃す事なく、碧人は魔法陣を凍らせて、氷の中に魔法陣を閉じ込める事に成功した。
「右手にあるその小さな魔法陣は役にたたなくなったぞ。今までの戦闘から、右手は攻撃用の魔法陣、左手の魔法陣は防御用か?」
「……その通りだ。対人用の戦いかたでは君には届かない様だ」
「当たり前だ。俺の氷は俺を守るのは勿論だが、仁を守る氷でもある」
「それは同じだ。この魔法陣は琢磨だけを守るためにある」
「自分は守らず、杉崎琢磨だけを守るか?」
「……それが、守川家の宿命」
「下らねぇな」
「……そうだろうな。昔まではそう思っていた。しかし、琢磨様がどれ程の苦しみを背負っているかを知った時、この力は全て琢磨様の為だけに振るうと決めた。その覚悟はなにがあっても揺るぎ無いものとなった」
「どれだけほざいても、実力が無ければ、ただの戯れ言となる。お前はどっちだ?」
「……何があっても琢磨様を守る。それだけだ」
翔馬は右手付近に浮遊している小さな魔法陣と連動させた大きな魔法陣が氷の金剛石の内部で回転を始めさせる。
すると、少しずつ氷にヒビが入っていく。
「どうやら、君の氷の強度は内側に行けば行くほど弱くなるみたいだね」
「……」
「破壊出来るのは、ここまでか」
翔馬は破壊された氷を見つめる。
破壊出来たのは、魔法陣を閉じ込めていた氷だけであり、碧人の目の前にある氷はあり続けた。
翔馬は碧人の氷の強度が内側が極端に弱い事を知ると、そこに勝機を見出だす。
 




