第415話 縫合抜糸(ほうごうばっし)
重信はそれを言い残すと、能力によって地面を破壊して国光、翔子の目の前から姿を消す。
「翔子。あいつどういった戦闘を行うんだ?」
「さぁ?でも、対戦相手は全て血まみれで、人体が切断されるらしいけど」
「地面を破壊したのもあいつの能力か?でも、逃げる所を見ると正面からは戦いたく無いのか?」
「どうでしょうね。でも、逃げたからにはなにかあるでしょうね」
「破壊された地面から追っても良いが……嫌、階段を使うか」
「どこから行っても罠がありそうね」
「そうだろうな。行かない事にはなにも始まらない」
「……私も準備を進めないとね」
翔子は手に拳銃を持ち、魔法石で出来たカートリッジを取り付ける。
「翔子。魔法を使うのか?」
「実弾でどうにかなる相手ではならないでしょう」
「……魔法を使い過ぎるなよ」
「心配してくれるの?」
「……麻倉家の魔眼は特殊だ。特にお前のはな」
「心配要らないわ。私は私の力を振るうだけ」
「……そうか。お前らしい」
国光が階段を降り始めると天井が崩落する。
翔子は驚く事無く、背後に居る存在に警戒する。
「……リーダーが下敷きになっても、微動だにしないんだな」
「する必要ある?」
翔子は背を向けたまま、答える。
そんな翔子に違和感を感じながら、重信は首を傾げる。
その直後、翔子は振り替える事無く、拳銃の引き金を引く。
拳銃からは圧縮された魔力が重信へと向かっていく。
重信は驚きながらも、咄嗟に防御した。
「……どうやって防いだのかしら?」
「……俺の能力は縫合抜糸。糸操作は勿論だが、縫い合わせ、抜糸も出来る」
「糸操作で地面を破壊出来るかしら?」
「……そうだな。俺の能力は縫い合わせた箇所を解くとその部分を切断する事が出来る。当たり前だろう?縫合は開いた箇所を元に戻すんだ。それが常識だ」
「なにそれ?」
「……簡単に言うと、嫌、見せたほうが早いか」
重信は壁を縫い合わせる。
重信はポケットから手術用のメスを取り出し、壁に縫われた糸を切っていく。全て切り終えると、重信はメスをしまうと壁に向かって、デコピンをする。壁は円状に切り離され、下へと落ちていく。
翔子はメスだけで、壁を切ったとは思えなかった為、重信の話を信じる事にした。そんな翔子は自身の体は縫われない様に警戒を強める。
そんな翔子を見て、重信は不思議そうに首を傾げる。
「……そんなに身構えても、どうする事も出来ねぇよ。そもそも、さっきどうやって壁を縫ったと思ってるんだ?」
 




