第41話 三人の氷能力者
「悪いがこの男は俺が責任を持って連れていくよ」
「はい。お願いします」
俺は上原さんの提案を承諾する。
上原さんなら大丈夫だろう。
「廉、紫音を早く」
そうだ。舞に言われて気がつく。
紫音を助けないと
「すみません。失礼します」
「うん。後の事は任せて」
俺は上原さんに任せて紫音を助けに向かう。
舞は氷を溶かす剣を創造して、詩音に凍りついた氷を溶かす。
「紫音、大丈夫?」
「うん。ありがとう舞」
どうやら、紫音は大丈夫そうだ。
それにしてもこの場に氷系の能力が三人も居るとは凄いな
「倒したんだね」
……倒した?
俺と舞はどこから説明するか考え込む。
そもそも俺は何も出来なかったからな
「俺は何も出来なかった。舞が追い込んだんだよ」
「えっ?舞が?」
紫音は驚いている。
俺が倒したと思っていた様だ。
舞は腰に手を当てて、得意気に話を始める。
「私の妖魔剣創造があれば余裕、余裕」
舞は笑顔で紫音に、俺に余裕のアピールをしてきた。
何も言い返せない。紫音も同じ様だ。
舞が居なければこの戦いは勝てたか分からない。
……そうだ。上原さん。
俺は、はしゃぐ、舞の頭に手を置いて
「何一人で倒したみたいな事言ってんだ。上原さんが倒してくれただろう」
「そうだけど……私一人でも倒せたもん」
確かに舞一人でも倒す事は出来ただろう。
「上原?」
壁に手をつきながら紫音は俺に聞いて来た。
「あぁ、上原さんが助けてくれたんだ」
「じゃあ、あの氷の異能力者は?」
「上原さんに任せたぞ」
紫音の表情が一気に変わる。
そう言えば石原碧人が言ってたな。
紫音と上原さんの間に何かあったのか?
紫音の様子が可笑しいのは石原碧人の氷を見てからだったな
「これで、事件解決だね」
舞はそう言うが……
「そもそも俺達はコンビニ強盗を追ってたろ」
「……えっ?じゃあ依頼失敗」
舞は慌ててスマホを確認する。
舞は笑顔の絶えない奴だ。いつも通りの舞を見てどこか安心する。
「何、笑ってるの?」
舞が不機嫌そうに言った。
俺は笑ってたのか?
……何で舞は不機嫌そうなんだ。
「不機嫌そうだなぁ」
「見てこれ」
スマホを俺に見せつける。
どうやら、他のチームがコンビニ強盗を捕まえた様だ。
……紫音は無言まま、氷を見つめている。
「紫音?」
「何?」
「どうかしたか?」
「何でも無い。依頼は失敗だね。帰ろうか」
俺達[アブノーマル]の初の依頼は失敗に終わった。
石原碧人、上原さんの氷はその後一時間をかけて処理された。
石原碧人のその後は上原さんしか分からないが……まあ、[雷帝軍]の副リーダーだし、上原さんに任せれば良いか。




