第407話 試合開始
現在。
能力者育成機関高等部一年決戦。第3回戦目山梨支部vs静岡支部が執り行われようとしていた。
静岡支部の控室で作戦が行われていた。
「琢磨様。作戦を」
翔馬のその一言に琢磨は何の感情も無く答えた。
「各自、自由にやってくれ。誰が倒れようとも、僕はチーム[グレイプニル]を勝利へと導く」
琢磨のその答えを聞いた翔馬は反論する事無く、口を閉ざす。
翔馬を置いて、琢磨は琴乃に近づく。
「琴乃。調子はどうだ?」
突然話しかけられたものの、琴乃は目、眉等動かす事無く、無言で頷く。
琢磨はそれだけを確認して、控室を後にする。
そんな琢磨はとある人物の目の前に立ち尽くす。
「父さん。約束は守って貰うぞ」
「あぁ、この大会で優勝出来たらな」
「優勝しなくても、琴乃の体内にある魔法の鎖を取り除く事は出来る」
「……無理だ。あの儀式で俺の魔力を混ぜ混んでいる。あの女の体内に干渉するには俺の魔力が必要となる。優勝以外では手を貸さんぞ」
「……優勝すれば良いんだろ?」
「そうだ」
父のその答えを聞いて琢磨はその場から離れる。
琢磨はこの大会に優勝する事を目指し戦う事を静かに決める。
「皆さん。お昼を食べ終わりましたか?それでは能力者育成機関高等部一年決戦の第4回戦を執り行います」
実況の松元のその言葉と同時に森林スタジアムの内部に転移魔法によって山梨支部代表チーム[クリムゾン]と静岡支部代表チーム[グレイプニル]が移動していた。
「……この大会優勝してみせる」
琢磨は黒魔術:妖術を発動させる。
全身から放たれた黒いオーラは周りに生い茂る草木にぶつける。
妖術によって草木からエネルギーを奪い自身の力へと変換させる。
「……杉崎琢磨だな?」
「……そうだが」
琢磨は目の前に現れた少年に対して、警戒心も無く、堂々としていた。
「……五十嵐京介だったな?」
琢磨は思い出した様に告げる。
「……最初にリーダーとやれるとはな」
「……戦えても、勝つ事は出来ないぞ」
「魔法の使い手なら、魔力を奪うだけだ」
「違うな。奪われるのはお前のほうだ」
「……魔法は魔力を消費する事で発動するものだ。ならば、魔法を多く使わせるだけだ」
「その考えが間違っている。僕の妖術は他者から奪うものだ。魔力を消費しても、相手からそれ以上のエネルギーを回収させれば良いだけだ」
「……そう簡単には奪えないよ」
京介は風嵐切裂を発動させる。
右手に風を纏わせた京介は琢磨に向けて、放つ。
風嵐切裂が風の発生と操作が出来る他、その風は切断力はコンクリートを簡単に切断させる事が出来る程だ。
 




