第404話 人工能力
「そうか。それでは、造り終えたら出ていくんだな?」
「あぁ」
「その前にお前には見てもらいたいものがある」
「何を?」
「とある能力者の誕生を」
父のその発言を正しく理解する事無く、琢磨はいつも通り学校終わりと共に転移魔法によって、自身の部屋に戻り魔法の鎖を造り始める。
「父さん。造り終えたよ」
「それでは、行こう」
「何処に?」
「地下施設だ」
「そんな所に何がある?」
「……来れば分かる」
琢磨はそれ以上口を出す事無く、父の後について行く。
琢磨は地下施設に着くと周りを見渡す様にキョロキョロと確認を始める。
琢磨はこの場所を知っていたが、来たのは初めてだった。
「……わざわざ、地下施設に来てまで何をするんだ?」
「最初に謝っておく」
父は自身が造った魔法の鎖を浮遊魔法で操り、琢磨を縛り上げる。
「何のつもりだ?」
「……大人しく見て貰うためだ」
「だから、何をだ?」
「これをだ」
父は手術台の様な物を指差す。
その台の上には一人の少女が動けない様に台に固定されていた。
「琴乃?琴乃なのか?……父さん、何をやってる?その台に居るのは琴乃だぞ」
「急にどうした?」
「能力の誕生って言っただろう?無能力者の琴乃の能力者にするつもりか?」
「……そうだ」
「分かっているのか?人工的に能力者を造るのは簡単な事では無い事位知っているだろ?」
「あぁ、最悪死に至るな」
「それを分かっていて?」
「……こいつの命は二億で買い取った。つまり、こいつの両親は二億で子供を捨てた。俺の所有物をどうしようと構わない。それとも、お前が二億でこの女を買うか?」
「物みたいに言うな!」
「……魔法の鎖に縛られているお前には何も出来ない」
「だったら、何の目的で僕を縛る?」
「お前の黒魔術では不十分だ。黒呪術に目覚めて貰う為だ」
「……その為だけに、琴乃の命を踏みにじるのか?」
「そうだ。杉崎家の次期当主としてお前には次のステージへ上がって貰う」
身勝手なその発言を耳にして、琢磨が反論しようとしたその時、扉が開く。
それと同時に扉を開けたのが誰なのか、確認する為琢磨は扉の方向を見つめる。
そこには、面識は無いものの琢磨が知っている人物が居た。
静岡支部の名門相沢家の当主と次期当主の二人の親子だ。
「それにしても、本気でやるつもりですか?」
「……あぁ、琢磨の造った一万の魔法の鎖をこの女に入れ、魔法の鎖の能力者にする」
「しかし、元々魔法の鎖は魔法、能力、異能を封じる事が出来る魔道具ですよ。それに加えて、琢磨君の造った魔法の鎖は上手い事、妖術と組み合わされています。彼女の体に入れた瞬間、彼女から生命エネルギーを吸いますよ」
 




