第4話 昔話
四月一日
廉は朝起きると共に大きな欠伸をした。今日から廉も能力者育成機関東京本部の高校生となるわけだが一つだけ問題がある。それは昨日舞と約束したチーム結成の件についてだ。チームを結成しても、廉と舞の二人だけでは出来るものは限られている。それでも、廉が舞とのチーム結成にこだわるのかと言えば、話は一年前に遡る。
舞の異能は妖魔剣創造それが全ての始まりだった。
妖魔剣創造は妖刀、魔剣、妖魔剣を創造出来る異能力である。舞は昔よく剣を作りだし、廉と手合わせを何度も行い、舞の実力は廉以上である事は当時、川上道場に居る人間なら、把握出来た事だった。しかし、舞の妖魔剣創造はこの世に無い剣、物質まで作ってしまう異能力だ。まさに実態の無いゴーストそのものだ。そんな異能故に舞は妖魔剣創造で妖魔剣を作り、意識を乗っ取られた事があった。その紅色に輝く剣は舞は破壊の限りを尽くした。その場に居た廉と玲奈さんで止めに入っり、廉は炎神の魔武器で創造した炎神の魔剣で応戦したが禍々しい黒…ピンク…赤と色々と色を変える剣を一度受けただけで吹き飛ばされ気絶をした。目覚めた時には、玲奈さんが一人で舞を止めたのが分かるような光景を目にしていた。
この舞の暴走に川上道場の門下生は数名出ていき、その噂によって、それ以来、門下生が増える事は無く、減っていく事となる。
更に舞の止める為に一人で戦っていた玲奈は一ヶ月の間入院する事となる。
入院している玲奈の見舞いに来た廉は扉を開けるとそうそうに玲奈に告げられる。
「廉、舞の事頼んでも良いかしら」
「えぇ、玲奈さんが退院するまでは」
「……」
無言になった玲奈はうつ向きながら声を出すことも無く泣いていた。
廉はそんな玲奈を見て、考えていた。通常の玲奈なら、娘の舞相手に怪我などするわけも無い。それは、川上道場に居る人間は勿論、日本中の誰もが、玲奈と舞の実力があるのはと言う質問をすれば、誰もが玲奈と断言するだろう。玲奈は日本最強の女剣士と言われる実力者なのだから。つまり、舞の意識を奪い手にしたあの剣のみで玲奈を倒す程の力を得た事になる。
しかし、それを直ぐに納得するにはあまりにも漠然とした話だ。だからこそ、廉は泣いている玲奈に尋ねた。
「玲奈さんはあの舞が使った剣はなんですか?」
玲奈は暫く考え込むと
「舞の本来の異能よ。訳あって、舞の意識は突然変異を起こしている。貴方の炎神の魔武器と同じでね。異能は持ち主の思いに答えるとされ、記憶や環境が変化すると異能も変化すると言われている」