第399話 杉崎家
二年前。
静岡支部の名門杉崎家と言えば、魔法の鎖を産み出す家系として日本は勿論、世界でもその名を轟かせる杉崎家であった魔法の鎖を産み出せる人間が年々少なくなっていた。
そんな杉崎家は昔程の権力と財力すら低下していた。
しかし、杉崎家次期当主、杉崎琢磨によってかつての杉崎家は再び昔の力を取り戻すきっかけを獲ようとしていた。
「おい。化け物」
「……」
「お前の事だよ。杉崎琢磨。魔法の鎖を産み出すだけでなく、相手の体力まで奪う鎖を造った化け物。お前の造った魔法の鎖によって何人が死んだと思う?」
「……」
「……無視してんじゃねぇよ。杉崎家の魔法の鎖の精度が上がったせいで俺の家の魔封石が売れなくなったんだよ。この落とし前をつけろよ」
「……」
「……なんだ?その目は?俺をバカにするな」
琢磨は右手を男に向けて、差し出す。
「……なんだ?その手?」
琢磨は黒いオーラを放出させる。
黒いオーラを全身に受けた男は立ち上がる事も出来ずに地面に倒れていた。
そんな男は生気を失いかけ、少しだけだが、やけ細っていた。
「……僕には関わらないほうが良い。僕の黒魔術:妖術は全てを吸いとってしまう。これに懲りたら、もう僕には関わらないでくれ」
琢磨は倒れる男を素通りして、自身の家へと向かう。
「琢磨様。どこに行かれて居たのですか?」
スーツに身を包んだその男は琢磨と同年代と言っても過言ではないその男は琢磨を心配したと、言うよりも自身の仕事の為に動いてるような男だ。
彼の仕事は琢磨の身の回りのサポートであり、彼がこの仕事を任された理由は同い年と言う理由だけであった。
そんな彼の家は代々杉崎家を守護する家系の守川家だ。
守川翔馬は苛立ちを隠しながら琢磨と対峙していた。
「……外に行っていたよ」
「お出掛けになる時は、一声断りを入れてください」
「……次は、そうするよ」
琢磨はそう告げると歩き始める。
そんな琢磨の歩幅に合わせて翔馬は足を進める。
「……守川」
「なんでしょうか?」
「学校にも行かずに、僕に付きまとうだけで一日を消費させるだけで良いのか?」
「……良いか、悪いか、ではありません。私は一族の命令通り。貴方の護衛をしているだけです」
「……君を必要とする人間は数多く居るのに、僕なんかにその才能を使う必要なんて無いよ」
「琢磨様……私には一族の判断無しでは何も決める事が出来ません」
「……一族か?」
「……琢磨様も杉崎家に居れば分かるかと」
「……すまない。守川。父さんには話してみる。君は普通の中学生として生活して欲しい」




