第39話 見えてきた勝利
妖魔剣創造を躊躇せずに使う今の舞は強い。負ける理由が見当たらない程に……
とにかく、今の舞は負けない。
剣が触れた瞬間に溶かしてしまう剣がある限り舞に氷は効かない。
接近戦になっても舞は川上道場で培った剣術がある。
それに剣を持っている時点で舞の有利だ。
舞はさらにもう一本剣を造り出す。
舞を振り返ると俺を見てニコッと笑う。
それと同時に持っていた剣を俺に目掛けて投げつける。
(嘘だろ)
俺は逃げたいが、氷付けにされている為動けない。
剣は氷に突き刺さる。
氷だが、正確には俺の股の間に突き刺さる。
「危ないだろう」
「助けてあげたんだから、文句言わないでよ」
助け?
剣が刺さった部分から氷は溶けていく。
「なぁ……危な」
急に溶けた為バランスを崩し、倒れてしまった。
助け方他の方法無かったの?
だが、助かった。
これで俺も戦える。
「廉は休んで、私が倒す」
休んでって……
まぁ、今の舞なら大丈夫か?
とりあえず、俺を覆っていた氷を溶かした剣を取る。
この剣があれば氷を溶かす事が出来る。
後ろにある氷を溶かしてみるか。
俺は剣を突き刺す。
……あれ?
刺さりもしない。
やはり、舞しか使えないのか?
だけど、異能力の武器は殺せば奪う事が出来るはず、舞は今生きてるし……
そもそも、二本も出してるし……
舞の場合は……紅桜とかじゃないと無理なのか?
どのみち今はこの剣は使えそうに無いな。
俺は地面に剣を置く。
石原碧人の氷は舞しか溶かす事が出来なそうだな。
舞は幾つもの剣を造り、剣を投げつける。
石原碧人はそれを防ぐ為氷を作り防御しているが、舞の剣が触れた瞬間に石原碧人の氷は溶けていく。
石原碧人と舞はそれを何度も続けている。
舞は余裕そうだな。
対して石原碧人は辛そうだ。
やはり、石原碧人の氷の金剛石は強力な異能だが、使用制限があるようだ。
その証拠に石原碧人の氷の量とスピードがさっき程では無くなっている。
息も荒く、ふらついている。
「もう勝ち目なんて無い」
舞は石原碧人に事実を告げる。
石原碧人は膝に手を当てて答える様子は無い。
氷の金剛石がこんなに簡単に破られ続けた事は無かったんだろうな。
だからこそ石原碧人は対応の仕方が分からないんだ。
舞の勝ちは確実……
「こんなに事件を起こすとは」
上から声がする。
上に居た人物は上の建物から落ちてきた。
着地はどうするんだ?
その人物の足元に氷が現れる。
その人物は無数の氷を出し飛び移り、地面に着地する。
「はぁはぁ……上原氷雪」
石原碧人は息を切らしながら告げる。