第388話 暗黒物質(ダーク・マター)
安藤は右手に覆われた黒いオーラを紫音にぶつける。
紫音の体は顔以外の全てが黒く染まっていく。
紫音は体を動かす事が出来ず、唯一動かせる顔を動かす。
「……何故、顔だけ残した?」
「理由は無い。何故かそうなった」
「……だったら、早く終わらせたら良い」
「……」
「人質にするつもりか?」
「する必要があるか?」
「廉だ」
「……お前らのリーダーがなんだ?」
「君の黒いものが降り注いでも、廉は動ける」
紫音は大きなモニターを見つめる。
そんな紫音と同じ様に安藤も確認する。
廉はなんの支障も無く、走っていた。
「……あいつはなんだ?」
「魔に対する耐性があることは確実だよ。チーム[クラッシュ]の副リーダーの茅ヶ崎隼人と同じ様に」
「そうか」
「……僕をどうするつもりだ?」
「こうする」
安藤は右手から黒いオーラを放出させ、紫音の顔面にぶつけさせる。
黒いオーラを浴びた紫音は全身が黒く染まっていた。
「はぁはぁはぁ」
「……随分と息が上がってるな。大丈夫か?」
息を切らしながら、廉は全身が黒く染まった紫音を見つめる。
そんな廉は無言で安藤を睨み付ける。
「怖いね。でも、それは可笑しいだろ?」
「……」
「お前たちチーム[アブノーマル]も俺達チーム[クラッシュ]のメンバー達を傷つけていただろ?」
「……そうだ。けどー」
「けど?この大会は戦闘力の低下の対策の一環だ。これから日本は戦闘力強化の為、戦闘訓練が続くだろう。そんな甘い事を言っている様ではお前はここまでだ」
「……お前の言う通りだ。それでも俺は、なにもよりも仲間を大事にしたい」
睨み合う二人の元に医療班が転移魔法によって紫音を連れていく。
廉は炎神の魔武器を発動させる。
炎神の魔武器は廉が想像した武器を造り出す異能。廉は炎神の魔剣を握る。
武器を持った廉に安藤は右手に黒いオーラを纏わせる。
「……無駄だ。俺の暗黒物質は全ての物質を消滅させる事が出来る能力。と、言っても生物は消滅出来ずに黒く染め、その箇所の動きを封じる。お前の神器はその剣だろ?消滅は出来ないが、お前と精神が繋がっているからな俺の暗黒物質に触れれば、お前にもダメージを受けるぞ」
廉は安藤の言っている事を直ぐに理解出来た。
川上玲奈の異能、黄金宝石の剣を奪われ植物状態になっているのを見て、武器を造り出す能力、異能が奪われれば、その持ち主に多大な影響を与える事を廉は知った。
それに、廉は以前檜山仁によって命を狙われ、神器を奪われそうになった事があった。神器を奪うには持ち主を殺すか、精神的なダメージを与えるかのどちらかである事も廉は理解出来ていた。




