第359話 経験不足
「……」
「……貴女の時間稼ぎに付き合ったけど、もう稼げたかしら?」
「……まだ、稼げる。」
「……これ以上稼ぐなら、実力で稼いでね」
美穂乃は自身の周りに圧縮された雷の球体を出現させる。
優菜は完全模倣を発動させ、美穂乃の周りにある圧縮してある雷の球体のレプリカを造り出す。
「無駄」
美穂乃は呆れた様にその言葉を吐き捨てた。
優菜はその言葉の意味を理解したのは、直ぐの事だった。
優菜が造り出した圧縮している雷の球体は電流を放ちながら、放電を始めた。
「だから、無駄って言ったでしょ。この球体は私の能力によってこの形を固定させてるの。球体をコピーしても固定を維持出来なければ、スパークするでしょ。貴女の能力は私の能力をコピー出来ない。この時点で勝負は決している」
「だとしても、貴女の能力を出来るだけ皆に伝える」
優菜のその敗北を恐れずに突き進むその姿は、最初にこの試合から離脱した海藤の姿と美穂乃は重ねていた。
(……勝てない。力が無い。それを理解して残ったチームメイトに伝えようと、迷いもなく、己の全てをかける……彼女の事、もう悪くは言えないわね。戦場に立つ者として、最高の敬意を)
美穂乃は優菜のその覚悟を称え、全力で戦うことを決め、能力を発動させる。
周りに浮遊していた雷の球体を自身の手元に移動させる。
圧縮されていた雷は姿を変え、銀色の拳銃に姿を変える。
優菜は雷の球体が拳銃に変わるなど予想もしていなかった為に、戸惑う。
そんな優菜に美穂乃は自身の能力を説明する。
「私の能力は超電磁銃。雷を造るのも、操るも自在。そして、雷を拳銃に変化させる事が出来る能力」
「雷を拳銃に?」
「……何で拳銃のみの限定なのかと思った?……そうゆう能力よ」
美穂乃は雷の球体から拳銃変えた拳銃を浮遊している雷の球体に近づける。
浮遊していた雷の球体は造られた銀色の拳銃の中へと入っていく。
「……この拳銃の面白い所はね。雷を放つ事が出来るの。浮遊している球体からも放つ事が出来るんだけど、精度、威力はこの拳銃とは比べものにならない。そうね……簡単に言ってしまえば、この拳銃の引き金を引けばレールガンを放つ事が出来るって言えば、この拳銃の脅威は理解して貰えるかしら?」
「……ええ、軍事等が注目している攻撃手段の一つ。スピード、破壊も申し分ないとされるものでしょ?」
「それを分かっても引かないのね?」
「ええ」
「いい覚悟ね。一撃で終わらせてあげる。心配しないで、医療班には復活させし神の花園はるみも居るから直ぐに体は元通りに戻るわ」
美穂乃は優菜に恐怖を少しでも緩和させる様に告げたが、美穂乃だったが、自身のその行動は無駄だったと悟る。優菜のその表情を見て。
逃げる事等微塵も考えておらず、攻撃も避ける事もするとは思えない程、身構えても無い。美穂乃はそんな優菜の覚悟を尊重して銀色の拳銃の引き金を引く。




