第33話 紫音の怒り
説得するなら、舞?紫音?
紫音はいつもとは何かが違う。
舞を説得するか?
舞も乗り気だし、とりあえず一人でも説得出来れば良いんだが
「廉には悪いけど僕は一人でも行くよ」
「紫音、どうしたんだよ?」
紫音は何だか様子が可笑しい。
「紫音を一人にする訳にはいかないでしょう、リーダーなんだから」
舞の言う通りだ。
けど、舞を危険に巻き込む訳には……
「それで、何で廉はいきなり引き返そうとしたんだ?」
「何でって」
俺は舞を見る。
舞を守りたい。
「もしかして……私?」
「嫌……」
……舞は涙を浮かべる。
……何でだ?
「昨日何で……一人で無茶したの?」
「何でって……」
「私も戦える」
泣いてくるにも関わらず、舞の強い意思を感じる。
戦えるって……
舞……お前は妖魔剣創造を使えないだろ
「もう私は守られる存在じゃあ無い」
……舞がそんな事を考えてたのか?
「廉、とりあえず行かないか?」
紫音が俺に提案をする。
「僕達はチームだ。一人じゃあ無いんだ」
……だけど、舞を守りたい。
「……一人で戦う訳じゃあない。皆で戦って、足りたい部分はお互いに支えあう……それがチームだろう」
……紫音の覚悟は分かった。
……舞は俺が守る。
「分かった。とりあえず行ってみよう」
俺は覚悟を決める。
誰が相手だろうと勝てば良い。
俺達は氷が続く道を歩いていく。
「これって……」
紫音が驚きの声を上げる。
どうやら、この氷を見てか。
数人の人間が凍り付けになっている。
「早く連絡しよう」
紫音は荒く声を荒げた。
それもそうかこのままでは氷の中に居る人間は窒息死してしまうだろう。
……間に合うのか?
舞はスマホで連絡してるみたいだ。
「きゃあああ」
舞の悲鳴だ。
「舞」
俺は舞に駆け寄る。
舞は無事か……
スマホが凍り付いてる。
道にあった氷と同じく氷通りのだ。
「そいつらを助けたいか?」
俺達の目の前に青髪の男が現れる。
間違いない会議室で見た写真の男だ。
「木山廉はお前か?」
青髪の男ー石原碧人は俺達三人を見ると俺を見て、ニヤリと笑った。
「君がこの氷を出したのか?」
紫音は石原碧人に問いかける。
「……お前は確か上原家のパシリ……奴隷……呼び方は何でも良いか。学校に行くことで逃げてきた……敗北者と言った良いのかな」
……紫音?
「黙れ」
「黙る?何故?氷系の能力は数が少なく、扱いも難しい。だが、俺は使えるがお前には無理だ。ただでさえ難しい氷系の能力に加えて神異能者。……神は残酷だな。上原氷雪なら使いこなせただろうに」
石原碧人はニヤリと紫音を挑発している。
それにしても紫音は上原氷雪と繋がりがあるのか?
「今の僕はあの頃の僕じゃあ無い。決別をし、歩き出す。僕は上原氷雪を越える為に」
紫音の手に冷気なのか?
手から白い煙が出ている。
「無駄だ。何事にも相性がある。お前には無理だよ。俺も上原氷雪も」
「ふざけるな」
紫音の手から氷の薔薇が石原碧人に向かっていく。
刺もあり、無数に飛んでいく。
「薔薇か?俺にプレゼントか?」
「黙れ」
明らかに紫音を挑発している。