第329話 補食
ベルセルクは躊躇いも無く、木内の体を喰らう。
大きく口を開けても限度があり、細かく木内の体を喰らっていく。最初は抵抗していた木内だったが、次第に動けなくなっていく。
ベルセルクは木内の体の全て喰らうとまるで苦手な物を食べ終えた様な変な達成感があった。そんなベルセルクは、何度人間の肉を食べる事に慣れる事は無く、出来る限り避けたいと考えていた。
「次で最後にするか。1日に何度も喰えるものではないからな」
ベルセルクは自身に言い聞かせる様に呟く。
ベルセルクは今日最後に野島大河を喰う事を決め、歩き出す。
歩き始めたベルセルクは壁に背を預けたジークを目をやる。
「見ていたのか?」
「……途中からね」
「野島大河は見つかったか?」
「……ヒルデが見つけた」
「そうか。それじゃ直ぐに向かう」
ベルセルクはジークが出現させた魔法陣でジークと共に移動する。
移動先は住宅街だった。
「こんな所に居るのか?」
隠れ場所としては十分な程に複雑に入り組んでいる住宅街だったが、ここに隠れると言う事はここに住む全ての人間を巻き込む事を意味している。
野島大河の情報は名前と顔写真だけしか把握しいるベルセルクは大河がどのような判断をするのか分からなかったが、学生と言う事で他人を多く巻き込む事に良心の呵責を感じるのではと考えたベルセルクはその疑問を隣に立つジークにぶつける。
「間違いなくここに居るよ」
「……ここに居る連中は野島大河を匿っていると思うか?」
大河は他人を巻き込んでも平然としていられる人間なら他人が殺されている中、逃走や時間稼ぎに利用するだろう。
しかし、東京本部が大河の身柄を守る為、動いている可能性もある。
ベルセルクはどちらか、または別の何かがあるのではと考え、ジークに確認を取る様に聞いた。
ジークは暫く考え、辺りに居る住人を確認する。
「居るとしても、数は限られると思うよ。だって、ほら」
ジークはベルセルクに歩いている住人を指差す。
歩いている住人はベビーカーを押しながら歩き続ける。
「……あれが、東京本部の指示で動いている可能性は?」
「……確かに変装術とか使えば出来るからね。そして何よりもあのベビーカーの中に赤子が居るかも分からないしね。どうする?確認するか?」
「……必要無い。ここに野島大河が居ればそれで良い」
「何処から探すつもり?」
ジークのその問いにベルセルクは行動で示す。
ベルセルクは無数の魔法陣を出現させると炎を放つ。
その炎は一瞬にして住宅街を炎に包ませる程の規模だった。




