第319話 母を救うには
「復活させし神で治せないの?」
「無理ね。私が出来る事はやり尽くしたわ。左腕の蘇生までね」
「左腕?」
「ええ、ここに運ばれて来た時には左腕は無かったわ」
「……」
「……せめて、魂させあれば何とか出来るんだけどね」
はるみのその一言に泣き続けて居た舞ははるみに近づく。
「本当ですか?その話」
「……ええ」
「……魂はどうやって取り戻せば?」
「魂を奪ったのはジークフリードとゆう男よ。彼が背に背負っている黒棺に魂を押し込めているみたいだから……黒棺を破壊出来れば、持ち主の元に戻って来るとは……思うけど」
曖昧な言葉を告げるはるみに舞は戸惑いながらも話を続ける。
「破壊すれば本当に戻って来るんですか?」
「……一つ問題があるけど」
「なんですか?」
舞のその質問にはるみは無言で窓を指差す。
舞は勿論だが、紫音も窓の外を見つめる。
病院の窓から見えた外の景色は仏像達が何食わぬ顔で歩いて居た。
その仏像達を止めるべく動く人間を見える。これ程近くに見える事から仏像と戦っている人間は病院に近づかせない様に戦っている事が分かる。
「あの仏像がなんですか?」
「あれは、黒魔術:降霊術によって動いている。魂を入れる事によって動かす事が出来るんだけど……貴女の母親の魂も仏像の中に入っている可能性もある」
「それじゃ……」
「……ジークフリードが持つ黒棺を破壊しても仏像に入れている魂は無事って事」
「……そんな……仏像を破壊してお母さんの魂を取り戻す事って出来ますか?」
「……ジークフリードと戦わずに奪えれば良いけど……仏像の数も戦闘力も分からないわ。確実なのはジークフリードを倒す事ね。でも、貴女の実力では歯がたたないでしょ」
「やって見なければ分かりません」
「……貴女の母親を簡単に倒す事が出来る実力者に?」
舞は言葉を失う。
はるみの告げたその言葉に舞は否定出来ずに居た。
否定したくても、はるみのその言葉に反論出来るだけの実力は舞には無い。
そんな舞は無言のまま病室を後にする。
そんな舞を紫音は止めること無く、目で追う。
そして、紫音は気がつく。
この病室に一緒に居た廉の姿が無い事を。
「……それじゃ、もう行くから」
「ええ、気をつけて」
紫音は舞をそして廉を探す為、病室から飛び出す。
「……何かあったの?」
病院の外に出た紫音は藍色の髪をした少女ー坂田優菜に呼び止められる。
「……舞のお母さんがジークフリード・アンサンブルに敗北して、魂を抜かれてしまったんだ」




