第31話 溶けない氷
舞を守りたい。その思いは今も変わらない。
俺はそう思うが今さっき結成した[アブノーマル]のメンバー、紫音、舞、俺は依頼を達成するべく、現場に向かっていた。
現場は能力者育成機関東京本部内のコンビニで犯行に使われたのは一本の刀で、防犯カメラの映像からその男は無能力者と断定された。
コンビニの従業員の話だと車で逃走したと証言が取れた。
だが、一つだけ問題が起きた。
それはこの犯人を追っているのは俺達[アブノーマル]以外にも居ると言うこと。
舞が教えてくれたのだが、スマホで見た限りこの依頼を受けたのはチームは6、個人では4となっていた。
多分、俺達は完全に遅れているだろう。
とりあえず、俺達は遅れを取り戻すべく、能力者育成機関東京本部の外に出て、探す事にした。
能力者育成機関東京本部内は他の人間が確実に探しているだろ。
ならば、俺達[アブノーマル]は少しでも可能性がある外を探す事にした。
「全然、居ない」
舞が少し苛立って居る。
紫音も少し焦っている様に見える。
だが、見つからないなら、それでも良いと思うと思ってしまう。
見逃す事はしないが……出来る限り舞を争いに巻き込みたくない。
「犯人はまだ捕まってないみたい」
舞はスマホを見ながら俺達に伝える。
「これは……」
紫音が驚きの声を上げる。
紫音がこんな声を出すとは素直に驚いた。
紫音がこんな声を出す事になる程の事があったのか?
俺は紫音の元に駆け寄る。
舞も紫音の元に駆け寄ってくる。
「これって氷だよね」
舞は確かめる様に俺達に聞いてきた。
確かに氷だろう。
しかし、この青色の氷……とても綺麗だ。
青色の氷は透き通っている。
目を奪われる程の美しく、氷には俺の姿が写っている。
俺の人生で氷をこんなにも長く見つめる時が来るとは思わなかった。
見とれていた俺は周りを見る。
舞は俺と同じく、見とれていた。
紫音は氷に触れている。
確かに触れてみたいとも思える。
俺は紫音と同じく触れてみた。
氷は冷たく、冷たい。
ただただ、冷たい。
氷は建物の至るところにあった。
「廉、凄いよ。この氷」
舞はテンションを上げて、俺に近づいてきた。
まるで雪の日にテンションを上げる子供の様だ。
「紫音どうかしたのかな?」
紫音が?
紫音を見ると氷を触れている。
「何してるんだ?」
「行ってみよ」
今の舞はテンションが高い。
舞は俺の手を掴んで紫音の元に向かっていく。
「紫音。何してるの?」
舞のテンションは変わらず、子供の様だ。
紫音は難しい顔をしていた。
どうかしたのか?
俺は確かめて見る。
「紫音、どうした?」
「この氷は普通の氷じゃあ無い」
それは感じていた。
そもそもこんなところに氷がある訳無いか。
だとしたら、これは何かしらの能力なのか?
「廉、舞これを見て」
紫音は目の前にある氷に手を置く。
何をしてるんだ?
舞も理解は出来ていないみたいだ。
紫音は氷から手を放す。
……これが一体何の意味があったのか俺には分からない。
舞にも無理だった様だ。首を傾げてる。
「僕はさっきまでこの氷に触れていたけど、この氷は全く溶けなかった」