第306話 連絡待ち
全身を黒一色の服装に身を包んだ当麻総一朗は白紙の紙を魔法陣が浮かび上がって来るのを待ち続けていた。
「当麻、そんなに見つめなくても良いだろ?」
東京本部高等部の制服に身を包んだ青髪の少年ー上原氷雪は無言で白紙の紙を見続ける当麻に少し肩の力を抜く様に話しかける。
「……確かに明神なら、簡単には死なないだろうが……今の俺にはこれしかやる事が無い」
「……確かに今は待機、暇な時間が続いているからね。その白紙の紙を見るのが暇潰しになるなら止めはしないけど」
「暇潰しの為にやっている訳では無い」
当麻は初めて白紙の紙から目を反らし、氷雪を睨み付ける。
その表情から氷雪はため息を溢す。
「まだ……怒っている様だね」
「何の事だ?」
「……北海道支部に居た君を東京本部に連れ戻した事だ」
「それが?」
「……父親の事だ」
「……気にしていない。家も家族も死んだが受け継ぐべきものは受け継いだ」
「受け継いだ?」
「あぁ」
当麻は手元に魔法陣を出現させ、取り出す。
黒一色の竹刀、黒竹光。
当麻家の家宝であり、当麻家の当主だけが持つ事が許される魔武器。
物体以外を全て吸収する事が出来る竹刀。
そんな竹刀を当麻は寂しげに見つめる。
氷雪はそんな当麻を見て、もう訳なさそうに告げる。
「……異常があったら報告してくれ」
氷雪はそう告げ、強絶が居る場所に向かう。
強絶は当麻が居る場所から少し離れた場所に居る氷雪は歩きながら考えていた。
(当麻はまだ怒っているな。東京本部に連れ戻したが東京本部の地下施設の騒ぎは大した事は無く、当麻が来なくても対処出来た。それなのに、連れ戻した上からの命令だが……気の毒な話だ。当麻の父親は無惨な殺されかたで犯人の特定も出来ていない。当麻はチーム[雷帝軍]に必要な人材だ。この事がきっかけに抜ける可能性もある……何とかしないとな)
氷雪は強絶の隣に立つ。
「……ヘラクレス・リックマンは強敵だ。気を引き締めろ」
「……目の前の敵には気を向けるのに、見方には気を回さないのか?」
「何の事だ?」
「……嫌、何でもない。忘れてくれ」
氷雪は強絶の予想通りの回答に諦めた様に会話を止める。
(予想はしていたが、強絶は当麻が父親の死を気にしている事にすら気づいていない。強絶らしいと言えばらしいがチームをまとめるリーダーとして動いて貰いたいが……無理だろうな)
「氷雪」
氷雪は自身の名を呼ばれ、我に帰る。
氷雪は自身を呼んだ人物を見つめる。
「どうした?」
「これを」
声の主である当麻は紙を氷雪に見せつける。
その紙には少しずつ魔法陣が浮かび上がっていた。




