第305話 勝利の翼(ウイニング・ウィング)
「それじゃ、作戦通りに」
白髪で赤と青のオッドアイの少年ー明神明は背中に十枚の翼を生やして、告げる。
瓦礫の山の上に居たチーム[雷帝軍]は明神だけを残し、転移魔法で移動する。
「お前一人でやるのか?」
「ええ、お相手しますよ」
やっと戦える状況にヘラクレスは笑みを浮かべる。
そんなヘラクレスはダメージが殆んど無かった。
東京本部防衛局を破壊する程の爆発に巻き込まれたにも関わらず、ヘラクレスは無傷と言っても過言では無い程である。
明神はヘラクレスが白魔術:仙術の使い手だと聞いて居た為、驚きはしない。
仙術は身体機能を極限まで高める事が出来る。
ヘラクレスは手にしていた槍を明神に目掛けて投げつける。
槍が届く前に明神は十枚の翼をはためかせて、宙へと逃れる。
「逃げ切れねぇぞ」
地面に突き刺さった槍は毒が垂れ続け、煙が宙に居る明神に届く。
その煙を吸った瞬間、明神の十枚ある翼の内、一枚の翼の羽が散らばる。
それと同時に明神は煙から遠ざかる。
「……天使属性の能力……面倒だな」
ヘラクレスは即死する筈の煙を吸ったにも関わらず、未だに動く明神を見て、明神の翼が天使属性の能力だと認識出来た。
勝利の翼。
天使属性の能力で、自身の受けるダメージを翼が肩代わりする能力で、死ぬ程のダメージは一枚の翼で肩代わり出来る。十枚あるため、十回殺さないと明神にはダメージを与えられない事を意味している。
そして、肩代わりした無数の羽は自在に操る事も出来る。
明神は無数の浮遊している羽を集めて、翼の剣を造り出す。
「剣ねぇでも、接近出来なければ意味が無い」
ヘラクレスは翼で出来た剣を無効化するために地面に突き刺さった猛毒竜の槍を抜き、猛毒の霧を発生させる。
「降りてこい。そして、隠れている奴等も出てこい」
辺り一面が猛毒の霧に包まれ、吸えば即死する猛毒の霧の中ヘラクレスはチーム[雷帝軍]を嘲笑う様に告げる。
「……これじゃ、誰も近づけないな」
宙を舞い続ける明神は地上に充満した猛毒の霧を見て、一人では対処出来ないと思いポケットに入れていた魔法陣が描かれた紙を取り出す。
明神は魔法陣が描かれた紙を破り捨てる。
(これで当麻に連絡が行った筈)
明神は作戦通りに動く。
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ヘラクレスと明神が戦いをしている場所から少し離れた場所に居たチーム[雷帝軍]は明神からの連絡を待っていた。
連絡は紙を使用した物で明神が持つ魔法陣が描かれた紙が破かれた時、対となる白紙の紙は魔法陣が浮かび上がってくるように細工された紙を連絡方法にしてある。




