第299話 木山可憐
廉は炎神の魔武器を発動させ、炎神の魔剣を造り出し、その剣をディジーと可憐に向ける。
廉は自身の動揺を隠す様に敵意を露にする。
「どれだけ否定しても、この事実は変わらない」
ディジーのその言葉に廉は反論出来ずにいた。
心のどこかで廉も理解していた。目の前に居る可憐が自身の母親だと言う事実を。
「話して貰う。木山ゲンマの居場所」
ディジーが廉に近づくその時だった。突然氷の蕀に体を巻き付けれる。
その氷の蕀はディジーだけで無く、その場に居た廉以外の全ての人間に巻き付いていた。
「紫音」
廉は氷の蕀を造り出した人物の名を告げる。
「ガラス越しに見えていたからね。それで、ここに居るのは誰?」
「チーム[プロダクション]だ」
「管理する神の傘下の一つの。このまま拘束する」
拘束されているチーム[プロダクション]の全員は動かない。
ディジー以外は造られた人間であり、ディジーの指示が無ければ何があっても動く事をしない。
しかし、ディジーはなんの指示をしない。
「随分と大人しいな」
廉は氷の蕀に巻き付いていたディジーに近づきながら告げる。
ディジーは何も答えずにただ微笑んでいた。
そんなディジーを見ていた廉はただ不気味で早く決着をつけなければ行けないと何故かその時、思ってしまった。それはディジーの笑みが不気味でだった事もあるが、拘束されているにも関わらず余裕を見せるディジーには何か秘策があると思ってしまった事が廉は早く決着つけるべきだと認識させた。
廉は手にしていた炎神の魔剣を強く握り、ディジーの首を切断しようと走り出す。
明らかに命を狙われたディジーは無表情のまま微笑んでいた。
そんなディジーを見て、廉の力をより一層強くなる。
走り続ける廉の目の前に空から飛んでくる一人の少女が目に映る。
その少女は炎に包まれた十枚の翼をはためかせて、優雅に地上に降り立つ。
廉はそんな女性を見て、戸惑う。
その少女は金髪碧眼で廉の目から見てもどこか自身の生き写しを見ているのかと思ってしまう程、似ていた。もし、兄妹がいたら目の前の少女の様な妹が居たんだろうなと廉に思わせてしまう程似ていた。
そんな少女の右手には廉が手にしている剣と同じ大きさの剣が握られていた。
廉は炎神の魔剣を空から飛んできた少女に目掛けて振るう。
少女は廉の動きに合わせて、手にしていた剣を振るう。
お互いに剣を交えた二人はこの瞬間に二つの剣が振動して、まるで共鳴しているかの様に黒い波紋と白い波紋が広がっていく。