第295話 リンの異能
背中から生やした翼も紅色の炎となっており、隣に居た明菜はその熱量に耐えきれず、距離を取る。
「……他人から能力を奪うレヴァンティン」
「違うよ。私の勝利の聖神剣はまだ、オリジナルの炎神の魔武器には勝てないからね。まぁ私の勝利の聖神剣は造られた物だから。……何で私の異能はナギサの神の頭脳みたいに機能しないんだろ?」
「どうでも良いが、俺と同じ炎を持っている奴が居るなんて虫酸が走る。お前は逃がさない」
仁は殺意を剥き出しにして右手をリンに向ける。
「お兄ちゃんからは貰うべきものは貰ったし、今日は帰るよ。これから廉お兄ちゃんの所にも行かないと行けないし。それじゃ、行こう」
リンは紅色の炎の十枚の翼をはためかせて、空へ浮かんでいく。
そんなリンを追いかける様に明菜も十枚の天使の翼をはためかせて、リンの後を追う。
「仁。良いのか?」
このままでは逃げられてしまう状況に碧人は仁に確認を取る。
仁はただ、空を飛んで離れていくリンを見つめていた。
仁は諦めた様にその場に腰かける。
「……良いんだな?」
地面に座り込む仁を見て、碧人は仁に戦う意志が無い事に気づいたが、最後の確認を取る。しかし、仁は何も答えない。そんな仁を見て、碧人は仁の隣に腰かける。
「どうやら、俺達はまた、レヴァンティンに因縁が出来たな」
「……俺の父親は死んだ筈……それに木山可憐も……嫌、生きてるのか?」
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「これから東京本部に戻るんですか?」
空を飛ぶリンの後を追うようにして後ろから追いかけていた明菜は行き先について訪ねていた。
向かっている方角で向かっているのが東京本部だと言う事には気づいていたが、明菜は飛んでいる最中の無言に耐えかねて、質問する事にした。
「そうだよ。廉お兄ちゃんに会う前に貴女の目的を優先するから」
「私のですか?」
「うん。息子に会いたいんでしょ?」
「えぇ」
東京本部の上空でこれ以上進めない為、地上に二人は降りる。
降りた場所には女神の旗で造られた旗が地面に突き刺さっていた。
女神の旗の効果でこれ以上先に進む事が出来ない。
「お願いします」
リンは笑顔で隣に居る明菜に頼む。
明菜は背中に十枚の翼を生やす。
その翼をはためかせて、羽を飛ばし旗に触れさせる。その羽が触れた瞬間、地面に突き刺さっていた旗の時間を止め、リンと明菜は東京本部内に入り込む。
時間が止まっていた旗が正常に戻って居るのを確認したリンは勝利の聖神剣を発動させる。