第294話 リンと仁
「……随分とふざけた存在だな」
「酷いな。お兄ちゃん」
「俺に妹何て居ねぇ」
仁は右手に覆われた紅色の炎をリンに向ける。
「それがお兄ちゃんの紅蓮の炎」
「だから、俺に、妹何て、居ねぇ」
仁のその叫びと共に紅色の炎はリンに目掛けて放たれる。
リンは紅色の炎を見ると笑みを溢す。
紅蓮の炎は炎系統の能力、異能において、一、二を争う程の威力と火力を誇る。
そんな炎から逃げる事無く、勝利の聖神剣を強く握る。
そんなリンの隣に立つ明菜は背中から十枚の白い翼を生やす。
翼を生やした明菜は翼をはためかせて、羽を紅色の炎にぶつける。
その瞬間、紅色の炎は一瞬で消えた。
右手に覆われた紅色の炎までもが消えた為、仁は自身の右手を見つめる。
「……あの女……能力無効系か?」
「嫌、明神明菜の能力は勝者の時。羽に触れた物の時間操作だったと思うが」
仁と碧人が話す中、目の前に居るリンと明菜も会話していた。
「何してるの?」
リンは狂気染みた顔で明菜を睨み付ける。
そんなリンを見て明菜は余計な事をした事に気がつく。
「すみません。余計な事を」
「……次は無いよ」
先ほどまでと違って笑顔で告げたものの、その言葉は重く、明菜にとってはこれ以上動けない事を意味していた。
「ごめんね。お兄ちゃん。邪魔が入って」
「……二人同時でも良いぞ」
「……それは駄目。こっちにも、計画?……スケジュール?……まぁ、手順があってさ」
「……何を言っている?」
「嫌々、何でも無いよ。お兄ちゃん。次、しよ」
リンは手にしている勝利の聖神剣を仁に向ける。
仁はそんなリンに対して、引く事無く右手に紅色の炎を覆わせる。
リンは全く動か無い。しかし、仁は動き出す。
仁は右手に覆われた紅色の炎を放出させる。
仁の右手から放出された紅色の炎は地面をえぐりながらリンに向かっていく。
離れている場所に居るのに対してリンと明菜は紅色の炎の威力を肌に感じていた。
紅色の炎の威力を理解していたが、リンは笑顔だ。
まるで、ずっと待ち望んでいたかの様に
「これだよ。お兄ちゃん。私が欲しい炎は」
リンは笑顔で仁の放った紅色の炎の目の前に立つ。
そんなリンの背中から十枚の燃える翼を生やした。
「……これは?」
背後で見ていた明菜は燃えているものの、紛れもない天使の羽に驚きを隠せずに居た。
リンは迫り来る紅色の炎を勝利の聖神剣を振るい紅色の炎を切り裂く。
「何で……仁の炎を?」
仁の隣に居た碧人は今までとは違い通常の炎から紅色の炎に変わった事に驚愕していた。