第287話 ジークフリード・アンサンブル
「ベルセルクを待たせている?」
「……あぁ、まだベルセルクの出番は来ないからね」
「つまり、ベルセルクにナニかをさせるつもりか?」
「だったら?」
「ここで出来る事をする」
「貴方が出来る事はあまりにも少ない」
「少ないからこそ、やるべき事がしっかりと見えてくる」
「そうですか。では、その悪足掻きを見せて下さい。……まさかその素敵な悪足掻きを見せずに死なれるなんて事は、無いでしょ?」
「ならば、見せてやろう。老いぼれの最後の本気を」
孫の体中から白オーラが放出される。
「白魔術:仙術の切り札。その白いオーラを纏い、一時的に身体能力を極限まで高める事が出来る。ヘラクレスも何度か使った所を見たから知ってるよ。でも、使い続ければそれだけ魔力を失うはず。大丈夫ですか?」
「自分の心配をしろ」
「……僕の?」
「そうだ」
孫は一瞬で移動して、如意棒をジークの腹に当てる。
しかし、如意棒はジークの腹に当たる前にジークが出現させた魔法陣によって止められる。
「……この速さについて来るだと?」
「確かに魔法に置いて、最も身体能力を向上出来るのは仙術ですよ。でも、それで勝負に勝てる理由にはならないですよ」
孫は如意棒を縮める。
「おや?もう良いのですか?」
「まだだ」
「そうですよね。仙術のそのモードは消費が激しい。途中での解除はしないのが鉄則。少し残った魔力では僕とは殺れませんよ」
「言われるまでも無い。お前を倒すまで、解除はしない」
(ジークフリードの能力を見極め無いと、勝機が無い)
孫はジークとの距離を取る。
離れていく孫をただジークは見つめているだけで、何もしない。
孫は地面に降り立ち、木の陰に身を潜める。
孫の体からは白いオーラが放出されているが、辺りは魔王神剣によって黒いオーラが充満していて、上からは孫の白いオーラが相殺されている。
「さて、そろそろ終わらせよう」
ジークは動き出す。
地上に居る孫は息を殺し、身を潜めていた。
「ジークフリードこの状況でどう動く?」
孫はジークから攻撃に警戒しながら、なかなか動きの無いジークに更に警戒を強める。
(剣?)
孫は突然、飛んで来た剣を如意棒で打ち落とす。
剣を一本打ち落とした孫は次に飛んで来た剣に対応したが、数百を越える剣には対応出来なかった。
体中に無数の剣が刺さった孫は 対応出来ずに空へと逃亡する。
空に飛んだ孫は目の前にとてつもなくテガイ大剣を目にする。
孫はその大剣を如意棒で防ぐ。