第284話 ヘラクレス・リックマン
「どうした?ジーク」
移動しなかったジークを見て、ベルセルクは不思議そうな表情で尋ねる。
「チーム[フレイム]を信用してなかったからね。それにチームリーダーが変わっていたみたいだから警戒して残ったんだよ」
「チームリーダー?……あの女か?」
ベルセルクは思い出しながらジークに確かめる。
「あぁ、ヒルデが調べた結果……名前も無く、父親、母親が居ないらしい」
「両親が居ない?」
「あぁ、そうだろう?ヒルデ」
ジークは情報元であるヒルデに確認を取る。
ヒルデは不思議そうに腕を組み、答える。
「えぇ、その通りよ」
ヒルデはそう答えると隣で準備運動をしてるヘラクレスを見つめる。
「随分とやる気ね」
「あぁ、日本には武器能力者、異能者が居るからな。これから奪い放題だ」
「そう。チーム[フレイム]の裏切りも無さそうだし、行っても良いわよ」
「あぁ、そうさせて貰う」
ヘラクレスは笑みを浮かべると魔法陣を展開させ、転移魔法で移動を開始する。
「強い奴は居るかな?」
ヘラクレスは無数の人間を目の前に隠しきれない殺意と喜びを露にする。
「ヘラクレス・リックマンだな?」
「誰だ?」
「君を殺す者だよ」
「面白い事をほざく。誰も俺は殺せない」
ヘラクレスがそう告げ終わると共に槍がヘラクレスの背中に直撃する。
槍を突き刺した者は笑みを浮かべるが直ぐにその笑みは消える。
その槍は刺さった感触は無く、血が一滴も出てこない。
槍を突き刺した男は驚きながらも後退りする。
「そんな槍じゃあ俺を傷つける事は出来ねぇよ。白魔術:仙術を使う俺には。それに槍ならこのレベルを出して貰わないとな」
ヘラクレスは魔法陣から槍を取り出す。
その槍は絶え間なく液体を纏っており、その液体は地面に落ちると地面を溶かした。
「あの槍は猛毒竜の槍」
「お前らごときじゃあ、一生見る事が出来ないであろう槍だ。……見たんだ。未練なんて無いだろう?」
ヘラクレスは猛毒竜の槍を無数の人間が居る場所に投げる。
無数の人間はその槍を止めようともせずにただ避ける。
猛毒竜の槍は地面に突き刺さると辺りを一瞬で毒の沼地へと変えた。
毒の沼地に足を取られた人間達は足元から煙を漂わせる。
無数の人間は足元が溶かされていく。
そんな中、ヘラクレスは毒の沼地を何事も無く、歩いていく。
足が溶かされ、次第に体の全てが毒の沼地に呑み込まれていく。
「やっぱりこの毒の耐性は俺にしか無いか」
寂しげで、不満そうな顔で猛毒竜の槍を手にして魔法陣を出現させ、猛毒竜の槍をしまう。