第283話 ビルの上で
ビルの上スマホを耳に当て、下を見下ろす様にしてその男は電話の相手と会話していた。
「ヘラクレス。直ぐに戻ってくれ」
「何があった?」
「何も無い……ベルセルクが東京本部内で待っている」
「合流するって事か?」
「あぁ、今回の目的は東京本部に居る神能力をベルセルクに食わせる事だ。ベルセルクには無駄な戦闘は殺らせない。先ずはチーム[ヴァルハラ]全員を集合場所に来て貰う」
「分かった。ここにヒルデも居る」
「……ヒルデ?潜入は失敗したのか?」
「ここは入り口付近。その可能性はあるな。しかし、俺はこの紙切れに文字が浮かんだからここに来たんだが……」
「分かった。とりあえず、合流してくれ」
「直ぐに向かう」
ヘラクレスはジークとの通話を止め、スマホをポケットに入れる。
「それで彼は何て?」
「直ぐに合流だ」
「……そう。ベルセルクが集合場所に到着したのね」
「あぁ、取り敢えず合流だ」
ヘラクレスは魔法陣を出現させ、ヘラクレス、ヒルデは転移魔法によってジークが待つ、ビルの上に移動する。
「ジーク」
「ヒルデ。君が得意とする潜入が失敗するなんてね」
「あら、あってそうそう。嫌み?」
「そんな事は無いさ」
「確かに今回どの様な作戦かは分からなかったけど、会議室に誰が居たかは、分かってるわ。川上玲奈も居たわよ」
「そうか」
「使う必要も無かったのに魔王神剣を使った理由は川上玲奈……かしら?」
「……何の事だ?」
ジークはヒルデから距離を取り、ベルセルクに近づく。
「ベルセルク。作戦の説明をしたいんだが」
ジークは隣に居る黒髪にたくましい肉体のベルセルクに語りかける。
しかし、ベルセルクは直ぐには答えない。ベルセルクは隣に居る集団に苛立ちながらも隣に立つジークとの会話を始める。
「何故、チーム[フレイム]が居る?」
「管理する神からの増援と言う名の監視だろうな」
「殺しても良いのか?」
「良いと思うのか?」
「じゃあ、殺すぞ」
「……駄目だ。ベルセルク、君が殺しても良いのは一人だけ」
「……今日はそれで我慢してやる」
ベルセルクをなだめたジークは作戦を告げる。
「それでは、作戦内容を伝える。チーム[フレイム]、僕、ヘラクレスは今回の目的である人物を見つけ次第ヒルデに連絡。ヒルデ、ベルセルクはここで待機だ。それでは、作戦開始だ」
ジークのその言葉にチーム[フレイム]は全員移動を開始する。
しかし、チーム[ヴァルハラ]は誰一人も動かない。