第282話 得られた情報
「黒魔術:変装術は姿、形を変える魔法のはずだろ?」
「普通はね。けど、私の変装術は世界にたった一つ。触れる必要はあるけど、触れる事に成功して魔力を相手の体中に覆えば、相手の全てを奪える」
男は女性の首とヒルデの魔法陣から出てきた女性の体を見つめる。
男は現状を理解する。ヒルデの変装術を使っている間は全ての攻撃が変装するために触れた相手にダメージを受ける事になるが、現在のヒルデは変装術を使っておらず、ヒルデ本人だ。
このままヒルデの首を切り落とせば、確実に殺せる。男はそれを実行するべく、剣を強く握る。
男はヒルデの首をめがけて、剣を振るう。
男が振るったその剣はヒルデの首に届く前に地面に突き刺さった旗によって止められる。
「次は貴方の番よ」
ヒルデは攻撃を仕掛けた事によって、防御が出来ない男の体へと手を伸ばす。
黒いオーラを纏ったその手は男の体に触れるとともに、男の体中に黒いオーラが包まれる。
暫くして、男は体には何も残らず、ただの肉の塊となって地面に倒れる。
ヒルデは男の全てを奪い取り、その男そのものになった。
ヒルデは地面に落ちている男と女の体と首を魔法陣に潜らせて空間内に入れる。
ヒルデは暫く考え込む。
男から全てを奪いとったヒルデは男の記憶も全て奪っている為、その記憶から必要な情報を確認する為、考えていた。
(情報といっても、集められた人間位ね。それにこの男は女を探して、ここまで来たみたいだし。戻らないと次の人間が動くだろうし……女性が死んだ時点で私の任務はここまでかしら)
ヒルデは変装術を解く。ヒルデの全身は黒いオーラに包まれたヒルデ自身の体を取り戻し、空間内に入れていた男を魔法陣から取り出す。
出た瞬間に男はヒルデに攻撃を開始する。
しかし、男は背後からの一撃によって、吹き飛ばされる。
「ヘラクレス、随分と速いわね」
ヒルデは目の前に居る体つき等が頑丈な男を見て、不満そうに告げる。
ここに増援されるメンバーは決まって居なかったが、ヒルデが最も来てほしく無かったヘラクレスの登場にヒルデは思わず、ため息を溢す。
「この男……武器は?」
「使っていたけど、無名の剣よ」
「そうか」
ヘラクレスは無類の武器好きで対戦相手の武器は全て持ち帰る事を絶えずにやり続けた男だ。例え無名の剣でも持ち帰る。
「そんな剣何の役にたつの?」
「……お前は知らないよだな。俺の……」
「……電話、鳴ってるわよ」
「あぁ……ジークか、どうした?」