第279話 魔帝神剣(グラム)
「これは……魔帝神剣」
玲奈はその写真を見て、確信を持って告げる。
「やはり、そこにたどり着くか」
孫は玲奈のその言葉を聞いて納得する。
魔帝神剣は玲奈の夫の神能力である。
魔帝神剣は世界最強の魔剣。
黒い刀身に歪な形で、黒いオーラを常に放出されており、そのオーラに触れた者は体が腐敗していく。
そんな魔帝神剣の特徴を見て、玲奈は確信を持てた。
写真を手にしている玲奈の力は強く、写真が折れていく。
そんな玲奈を見ても孫は止める事は無かった。
玲奈の夫は七年前にジークに殺され、その時に魔帝神剣を奪われていた。そんなジークがこの日本に攻めに来ていると言う事実を知り、玲奈は感情を抑えられずにいた。
「それでは、作戦会議に合流して貰うぞ」
「……えぇ」
孫に話してかけられた事によって力を入れていた玲奈は力を弱めると同時に、自信がジークに対して殺意を抱いている事に気がつきながらも、冷静さも保ち、足を進める。
「ここだ」
孫は部屋の前でそう告げる。その声に玲奈も足を止める。
孫は部屋の隣に取り付けられていた装置にカードをかざす。
それにより、部屋が開く。
玲奈は部屋に入ると、そこには玲奈が予想もしていなかった人物が居た。
「久しぶりです。玲奈さん」
部屋に入って直ぐに、一人の男に声をかけられた玲奈は戸惑いながらも答える。
「えぇ、娘がお世話になってるわね」
玲奈は話かけられた相手の羽田海斗に戸惑いながらも答える。
羽田海斗は東京本部高等部異能クラス一年の担任を務めている人物だ。
そんな男が、ここに居る事に疑問を持ちながらも玲奈は自身の為に空けられていた椅子に座る。
「それでは、会議を始める」
東京本部防衛機関隊長、橘吉凶は薄暗いその部屋で作戦を告げようとしていた。
吉凶は回りを確認する。
「一人来ていないみたいだが?」
一つ空いた席を見て、吉凶はその場に居る者に確認を取る様に告げた。
「それでは、探して来ますよ」
「……任せる」
吉凶の許可をうけて、男は来ていなかった女を探す為、部屋を出る。
男は少し歩いた所で女を見つける。
後ろ姿であるが、男は見慣れたその後ろ姿に駆け寄る。
「どうしたんだ?作戦会議に遅れるよ」
「ごめんなさい。今、行くわ」
女が足を進めるが、男はその場に立ち尽くす。
「どうしたの?」
立ち尽くす男に女は疑問をぶつける。
「誰だ?」
「……どうして?」
「ブリュンヒルデ・キースだな。彼女が遅れる事はあり得ない」