第269話 人間道
京の全身からは凄まじく黒いオーラが放出されていた。
「覚醒でも無い能力向上で何故ここまでのオーラを?」
「分からないの?」
京のその姿を見て驚く成田にナギサは決意を決め、話出す。
「貴方は京を殺し過ぎた」
「……どうゆう事だ?」
「六道輪廻は死ねば死ぬ程、その力を増す。貴方は京を殺すべきでは無かった」
「死ねば死ぬ程力を増す?……ふざけるな。俺に敗北は許されない」
成田は左右にある歪んだ空間を大きくしていく。
歪んだ空間が、床、天井にぶつかると歪んだ空間に吸い込まれていく。
その歪んだ空間は離れていた京とナギサを引き付ける。
京は全身から溢れる黒いオーラを右手に込め、成田に目掛け、拳を振るう。その動作と共に黒いオーラが成田に向かって飛んでいく。
成田はその攻撃を防ぐ為、黒神の重力を発動させ、自身の目の前に歪んだ空間を出現させる。
京が放った一撃は成田が出現させた歪んだ空間に吸い込まれる。
その瞬間、成田とナギサは驚きの表情へと変化する。
成田が出現させた歪んだ空間を一瞬で吹き飛ばしたからだ。
「……あり得ない。あってはならない。黒神の重力だぞ。ビッグバン並みの威力があるのか?」
成田は後退りしながら告げる。
成田は険しい表情をすると無数の歪んだ空間を出現させて、その場から離脱するため、走り出す。
「逃がすかよ」
京は再び右手に黒いオーラを圧縮させ、目の前にある無数の歪んだ空間に向かって放つ。京の一撃によって、吹き飛ばされる。
歪んだ空間は消え、成田も姿を消す。
京は慌てて、成田の居た場所に駆け寄る。
京は崩れた床を見つめる。
成田の黒神の重力によって、床と天井が崩れており、京は崩れた床から成田が離脱したと理解し、追うため、京は身を屈め、崩れた床から飛び移ろうとしたその時だった。
「待って、京」
ナギサのその一言に京は体の動きを止め、ナギサの元へ足を動かす。
歩き続ける京は何故ナギサが成田を追うことを止めたのか疑問だった。
「どうした?」
京はナギサの隣に座り、そう聞いた。
「限界だよ。京。ここは引いて」
ナギサのその言葉に京は納得出来ずに首を傾げた。
体力も気力も余りある。そんな状況だからこそ、京は成田を追いかける事にしたのだが、ナギサはそれでも止めた。その理由は京には理解出来ない事だった。
「何故?」
「私の能力は少し工夫をすれば、少し先の未来を知る事が出来る」
「……それで、お前の見た未来は?」
「大丈夫。成田は倒すべき人が倒すから」
「……それって、誰だ?」