第267話 絶望の果てに
「さぁ、始めよう。手足を奪うのは止める。殺し続けてやる。お前の精神がどこまで持つか見てみたいし」
成田は重力操作の能力を使い、京を強く地面に押し付けていく。
呼吸も出来ない京が死ぬのは直ぐの事だった。
しかし、地獄戻りの能力を持つ京は直ぐに生き返る。死ぬ前の1分前から5分まで間で生き返る事が出来るが、生き返った京は地面に押し付けられている状況のままだ。ここから逃げ出せない京はこれが永遠に続く事を意味している。
京はそれから何度も繰り返す。
生と死を。
「ナギサ……気づいているか?」
「……」
「喋れないか?……渡辺京は何度死んだと思う?俺達には何の変化も無いがこいつは寿命が尽きるまで死ぬ事が許されない能力を持っている」
「……」
成田は京とナギサにかけていた重力を解除する。
ナギサはふらつきながら、京の元に向かう。
京の目は生気を感じられず、全く動かない。
「それで?こいつがどれだけ死んだか分かるか?」
「何でこんな事を?」
「質問を理解していないみたいだな?」
「……分かっているけど、答えるつもりはない」
「そうか。でも、かなり死んだろ?」
「……」
ナギサの頭上に光輝く脳が出現する。
「神の脳か?」
光輝く脳から無数の糸の様なものが出てきた。
その無数の糸の様なものは成田に向かい動き出す。
「これは……不味いな。この糸に触れたら最後、脳の情報を書き換えられるからな。記憶操作も出来たっけ?」
成田は危機的状況に笑みを浮かべると重力操作を発動させる。
それにより、ナギサは再び地面に押し付けられる。
そんなナギサは驚きの表情で京を見つめる。
「きょ……う。駄目」
地面に倒れる京の体中からは黒いオーラが放出されていた。
「……覚醒か?ナギサによって引き上げられた能力がどう覚醒するか……見せてみろ」
京はゆっくりと立ち上がる。
全身から黒いオーラを放出させている京は穏やかな表情で立ち尽くす。
何度も死んだ京は何かをものにしていた。
「ナギサは何故か俺に覚醒では無く、能力向上を勧めてきた。そこにどんな理由があったなんか知らねぇが、何度も死んだがしっかりと持って帰って来たぞ。このが俺の能力向上六道輪廻だ」
京は体中から放出された黒いオーラを右手に圧縮させるとそれを成田に殴り付ける。
成田は重力操作を発動させ、京を地面に押さえつけようと能力を調整する。
しかし、京は全く、動かない。成田が困惑したその時だった京の圧縮された黒いオーラが成田の腹に直撃する。