第265話 多重魔法陣
「何で異空間移動が効かない?」
山瀬は左右の隆起した床を見つめる。
「青色の魔法陣?」
山瀬は異変に気がつく。
そんな山瀬に愛花は魔法陣を自身の目の前に展開させる。
「愛花……やらない方法も」
「良いの。全部終わらせるから」
美咲のその言葉に愛花は背を向けたまま、答えた。
愛花は出現させていた魔法陣に重ねる様に二つ目の魔法陣を展開させる。
「二つの魔法陣?」
愛花が出現させた二つの魔法陣に山瀬は疑問を隠せずに居た。
愛花は一つ目の魔法陣に魔力を圧縮させる。
「止めろ」
逃げ場の無い山瀬はたった一言思ったその言葉を告げる。
愛花は圧縮させた魔力を放った。一つから放たれた圧縮させた魔力は二つ目の魔法陣に触れる。この瞬間愛花はナギサと額を合わせた時の事を思い出していた。
魔法固定砲台は通常、魔法陣一つで放つものだが、少し距離を置けば、二つ目の魔法陣に強化魔法を附加させれば更に強化された一撃を放つ事が出来る。ナギサと額を合わせたその瞬間にそのイメージが入って来た愛花は現在、それを実践している。
二つ目の魔法陣に触れたその瞬間、強化された砲撃が山瀬に向かって放たれる。
能力者の覚醒はいびつで覚醒したら直ぐには異能から能力に切り替える事が出来ない為、山瀬は異空間移動が使え、空間移動が使えない状況で、山瀬は逃げられない。しかし、愛花が放った一撃は止まる事無く、山瀬に向かってくる。
「止めろ。止めてくれ。俺はこんな所で終わる男じゃあ……」
愛花のその一撃は山瀬の言葉をかき消す。
「愛花。どう?」
「終わりよ」
美咲のその一言に愛花は少し同様したように答えた。
この一撃は相手を殺すつもりで放った。せめての救いは山瀬の遺体も血も無く、死んだかどうか分からない事が愛花にとってはそれが救いだった。このナギサの指示は愛花が山瀬を殺す手段しか無く、他の人間では威力が足りず、全ての汚れ役は愛花に託されていた。
「ねぇ。ナギアチャン。チーム[リベンジャー]には入れてくれるんだよね」
「私に聞かれても」
愛花の言葉を聞いて美咲は愛花に駆け寄る。
「愛花。北海道支部には戻らないの?」
「……えぇ、私に殺しまでさせて置いて、居場所も用意されない何て事は無いだろうし、それにあのナギサって子の過去も少しだけど知ったからね」
「過去?」
「うん。この戦いが終わった後で何をするか全て知ったから、私も手伝いたいの」
「……私も残るよ。愛花だけに、こんな事をさせ……愛花を一人に置いていけない」
「……それで、貴方達は?」
愛花は長谷川、大地、ナギアに告げる。
そんな三人の意見は一致していた。
三人にはチーム[リベンジャー]に入る事を断る理由は存在しない。