第263話 ナギサの指示
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「大丈夫だよね?」
「あぁ、この作戦成功させる」
止まっているエスカレーターを大地、美咲、愛花、ナギアは歩いていた。
この四人は大地の地面方位によって把握している山瀬の場所まで徒歩で移動していた。
そんな四人はどこか緊張していた。
それは山瀬の強さもあるが、一番の原因はナギサの指示通りに動き、長谷川を救い、倒せるのかと言う疑問があったからだ。
その指示は山瀬の行動を含まれており、四人の不安は消えない。
山瀬はナギサの指示とは違う行動を取れば、その時点でこの長谷川の奪還と山瀬を倒す事が難しくなる。
神の頭脳の神能力者とは言え、まだ子供のナギサに信用出来ていない美咲は不安な表情を隠せていなかった。
「大丈夫です。オリジナルはこの世界一番の頭脳を持つ人です。信じましょう」
不安な表情をしている三人を見て、ナギアは告げる。
三人とは違いナギアには分かっていた。
ナギサの能力がある限り、ナギサはこの世界で一番の頭脳を持つと言う事を。
愛花はナギアの言葉を聞いて、微笑む。
「まぁ、やるだけやってみよ。私達全員に役割があるみたいだし」
「でも、そんなに上手くいくかな?」
「さぁ?」
「さぁって」
「でも、何だか負ける気がしないんだよね」
「その自信どこから来るの?」
「おまじないのおかげかな?」
「おまじない?」
「そう。ナギサって子のね」
美咲はここに来る前に愛花が、ナギサとおでこを重ねていた事を思い出す。
「どんなおまじない?」
「……そう……ね。まぁ、勝てる様にってさ」
美咲と愛花が、話している最中、前を歩いていた大地が無言で身を屈め、手を伸ばし、後ろに続く全員を止める様にした。
そんな大地を見て後ろに居た三人は身を屈め、足を止めた。
大地には見えていないが、感じていた。
地面方位によって山瀬の位置は把握出来ていた。
そして、大地はナギサの指示通り、近くに成田が居ない事を確認して、山瀬に姿を見せる事を決める。
大地は伸ばした手を下に下ろす。
「準備は良いか?」
大地は後ろに居る三人に確認を取る。
三人は無言で頷いた。
大地は屈めたていた体を起こし、立ち上がる。
そして、ナギサの指示通り山瀬の両隣の床を隆起させ、山瀬を挟む様に動かす。
山瀬は一瞬で姿を消す。
「よし。行くぞ」
大地のその言葉でエスカレーターに居た四人は広いスペースに出る。
ここまではナギサの指示通りだ。