第261話 黒神の重力(ブラック・ホール)
成田のその一言にナギアは驚きを隠せずに居た。
オリジナルが持つ情報はこの世界中全ての情報と言っても過言では無い。
そんな情報量を神の頭脳の神能力以外にはあり得ない事だ。
しかし、成田が言った事が事実ならナギアと言う存在は否定されてしまう事を意味していた。
プロジェクト・ナギアによって造られたナギアがナギサと同じ容姿、体型にしたのは、小さい子供なら持ち運びの時に一度に多く運べ、場所を取らない事が一番の理由だ。様々な手を施され、成長した体を持つナギア達はナギサの持つ情報の一部を持ち、五人が集まれば、ナギア一人分の情報量を持つ計算の元造られた。
しかし、成田はたった一人でナギサと同じ情報を持ってしまったとなると、プロジェクト・ナギア自体が否定される事にもなる。
「どの様な手段で?」
「……知りたいか?」
「……」
「まぁ、お前の変わりは何万体も居る訳だから……お前を殺したとしても問題は無いよな」
成田は左右に浮遊している歪んだ球体を大きくさせる。
「重力操作は覚醒し、黒神の重力となった。俺の前では満足に動けず、抗う事も出来ない」
成田のその言葉にナギアは突然消えた人々がどう消えたのか理解した。
「気をつけて下さい。徐々に大きくなるあの球体はブラック・ホールそのものです。呑まれたら二度と出る事は出来ません」
ナギアのその言葉に大地と美咲は一瞬で緊張を高める。
二人ともナギアと言う存在について、全てを知っている訳では無いが曖昧な知識として知っていた。ナギアのその一言が無かったとしても成田の左右に浮遊する歪んだ球体の奇妙な現象を見て、その球体の危険性は理解していた。
「ナギア。ここから最短で逃げる方法は?」
身を屈めた大地はナギアの耳元で訪ねた。
「……それでは、先ずは貴方の能力、地面方位で成田の視界を塞ぎ、美咲さんの転移魔法での離脱を提案します」
「……よし。それで行こう」
大地は体をおこし、美咲に耳元で囁く。
その直後、大地は地面方位を発動させる。
成田の目の前の床は勢い良く隆起する。
成田は突然の出来事に驚きはしたものの、直ぐ様左右に浮遊する球体を隆起した床に当てる。
球体が触れると隆起した床を一瞬で吸い込んだ。
成田は笑みを浮かべる。目の前には大地、美咲、ナギアの三人が姿を消して居たからだ。
「どこに逃げても無駄だ」
成田は居なくなった三人に告げる様に言い残すとその場から動き出す。