第260話 覚醒の成田
愛花、長谷川が山瀬と戦いを繰り広げていたその頃、大地、美咲、ナギアの三人は電化製品売り場に居た。
サイレンが鳴り響く中、逃げ惑う人で溢れていた。
「お兄ちゃん、どうする?」
「……急に人々が消えていく」
「えっ?」
大地のその一言に美咲は動揺する。
そんな二人の会話を聞いていたナギアはナギサに言われた言葉を思い返していた。
「貴方の能力は確か、地面方位ですよね?」
「あぁ、そうだが」
「地面操作と地面に触れている人間の把握が出来るであっていますか?」
「その通りだ」
「では、地面から足を離したのでは?」
「俺の地面方位は今まで、正確に地面に触れている人間を把握出来ている。今回は二十人位の人間が突然消えたんだよ」
「……エレベーター、エスカレーターの可能性は?」
「確かに地面方位は横方向の感知には強いが、縦方向には弱いからな」
「距離は分かりますか?」
「あぁ、かなり遠いが少しずつこっちに向かってくる」
「……それでは転移魔法で移動しましょう」
「……確かに移動したほうが良いのかも……」
「どうかしましたか?」
言葉を詰まらせた大地に確認を取る様にナギアは告げる。
「急に速度が変わった」
「では、早く移動を」
「嫌、もう目の前に居る」
大地のその台詞にナギアはその人物に目を向ける。
目の前に現れたのは成田智則。
重力操作の能力者としてここに居る全員が理解している人物だ。
そんな男を目の前にしてナギアは大地が消えたと言う話は重力を操作して宙に浮かしているのかと考えたが、現在宙に浮かんでいる人間は一人も居ない。
ナギアが持つ情報で考え続けているが、成田がどうやって、人間を消したのか考え付かなかった。
そんな成田の左右には空間が歪み、渦巻いている球体が浮かんでいた。
「ナギアか……ナギサはどこだ?」
成田はナギアを凝視してナギサでは無いことを見抜き、ナギサの居場所について質問をしていた。
大地と美咲は口を閉じ、ナギアは考えていた。
目の前に居る成田は昨日とは全く違った人物に見えていたからだ。
「貴方は誰?」
「成田だ。分からないか?」
「容姿は理解しています。ですが、現在の貴方は私が知っている成田智則とは違う様な気がします」
「……人造人間とは言え、与えられた情報は凄まじいな。確かに俺は今までとは違う。脳に入れたからな。……オリジナルの持つ全ての情報を」