第250話 加藤家の宿命
廉を追いかけていた彩美は昔の出来事を思い出していた。
「何をしている?」
「申し訳わけありません。お父様」
「早く、立て」
「はい」
彩美はゆっくりと体を起こす。
「良いか?加藤家の人間は全て雷属性の魔法を扱う。これから毎日一時間の間、俺が打つ雷に耐えろ」
「しかし……」
「口答えをするのか?加藤家の人間は全て行った伝統と格式高いこの行事に……お前は、それを否定するのか?」
鬼気迫る加藤家の当主で父親のその厳しさは娘相手でも手加減が無い。
「耐えて見せます」
「今日、二時間だ」
「えっ?」
「この行事に口答えしたんだ。その者に知れたらどうなると思う。父親だからと、皆が思えば、私は一族の当主から外れる事にもなる。お前は私の娘なら雷に対する体を作って貰う」
「でも……」
「何だ?」
「出来るんでしょうか?」
「知らん。出来なければ困る。始めるぞ」
「待って……」
彩美のその言葉が聞き入れられる事は無く、その日から彩美は雷属性の魔法を全身に受け続けた。
子供時から数年間父親の雷属性の魔法を受け続けた彩美の体は雷属性の攻撃に耐性がついた。加藤家に産まれて来た者は全てがそうなる様に英才教育が施される。
父親の雷属性の魔法を受け続けていた彩美は北海道支部学校中等部の三年の時、彩美は父親との手合わせを行い勝利している。
それからは父親の雷属性の魔法を受ける事はなかった。
そんな彩美は、北海道支部の襲撃を受けて、加藤家の人間が全て殺されたと聞いて、笑みを溢した。
伝統と格式を重んじていた加藤家に嫌気がさしていた。
しかし、加藤家が無くなった事によって帰る場所が無くなった彩美はどうするか悩んで居た所、舞によって東京本部学校高等部に誘われ、東京本部に暮らす事になった。現在は女子寮に住んでいる。そんな彩美の唯一の支えは舞だ。自身に居場所を与えてくれて、話を親身になって聞いてくれた始めて人の登場に彩美は舞の事を友達以上の感情を持って接している。
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彩美が上に行ったことを確認すると廉は下に通じる階段を目指し、歩き始める。
廉は足を止める。魔法陣が道を防いでいるからだ。
「いつまで逃げるつもり?」
背後から声がした為、廉は振り替える。
「上には行かなかったのか?」
「えぇ、索敵魔法があるからね。柱に居たみたいだけど、あえて泳がせて居たのよ」
「それが分かって居たら柱ごと俺を殺れたはずだろ?」
「……」
「何がしたいんだ?」
「知りたい」
「何を?」
「舞が言う貴方を」
(舞が?……一体何を言ったんだ?)