第248話 炎神の魔拳(レヴァンティン・グローブ)
廉は炎神の魔拳を装備する。
黒いグローブの全体は炎に包まれていた。
「廉が炎神の魔武器で造られた物を同時に三つも」
上空で繰り広げられていた廉と亮太の戦い中に紫音は三つ同時に装備した廉を見て、呟いた。
そんな紫音と同じ様に、舞も同じだった。
「廉……勝って」
舞は思った事をそのまま告げる。
そんな舞を見て、隣に居た彩美は暗く、殺意にも似た表情を廉に向ける。
「だいぶ、顔色が悪いな」
「あぁ、俺が勝つんだ。負けたお前の身を案じてるんだよ」
「それで、何で顔色が悪い?」
「気の毒に感じたからな。お前が……」
「面白い。お前は」
「次で決めようか」
「あぁ、俺はもう持たないみたいだからな」
廉と亮太は笑みを溢すと同時に動き出す。
亮太は拳を廉は炎神の魔剣を互いにぶつけ合う。
廉の一撃は亮太の腕を切り裂いた。
(やった……俺の勝ちだ)
廉が勝利を確信したその時、廉は亮太の腕から煙が出ている事に気がつく。
「何だそれ?」
廉は確認を取る様に亮太に聞いていた。
「言ったろ。竜の回復力と神の異常な生命を持つって。つまり、俺の再生力は凄まじいって事だ」
「……そうか」
廉は息を切らしながら炎神の魔剣を消す。
「剣を保てなかったか」
「……嫌、男同士拳で殺ろうと思っただけだ」
「じゃ、やろうか?」
その言葉と同時に亮太は廉との距離を縮め、拳を廉目掛けて連続で殴りかかる。
廉は炎神の魔拳を装備している。
そんな廉は防ぐ事しか出来なかった。
廉が装備している炎神の魔拳は触れれば、確実に火傷を負わせる事が可能だが、亮太にはそれを感じさせる事なく、拳を振るい続けた。亮太の全身は竜の鱗に覆われ、炎による攻撃が効いていなかった。
「どうした?」
廉は動きが悪くなった亮太に告げた。
「何も……そろそろ終わりにしたいと思ってな」
「奇遇だなぁ。俺もだ」
お互いに拳を強く握る。
二人はこの戦いに終わりを告げるべく、動き出す。
お互いに右手を頬に当てた。
亮太は直ぐ様落ちていく。その後、ゆっくりと廉も落ちていく。
そんな落ちていく二人は桜に包まれる。
(これは?……舞の紅桜か)
桜の正体を廉は正しく理解するとゆっくりと目を閉じる。
桜が消えると二人は地面に落ちた。
「半神半竜のお前と同等にやり合うとは……木山廉」
「同等ね?先に落ちたのは亮太君だと思うけど?」
大河の言葉に優菜は訂正を加えて、倒れる亮太に告げる。
「……俺の負けか」
事実を受け止める様に声を出して亮太は自身の敗北を受け止めた。